2階
夏「アキ 昨日のカレーの残りでいいか?」
アキ「うん…。」
夏「何だ 青い顔して…。 彼氏と けんかでもしたか? ヘヘヘッ。」
回想
アキ「種市先輩も 見に来ればいいのにな~。」
回想終了
アキ「そうだよ…。」
<種市先輩の名前を口にした途端 ユイの顔つきが変わったのです。 調子に乗って 種市先輩の話なんかするから…>
アキ「あ~! 種市先輩…。」
回想
種市「何か 天野としゃべってると 東京さ行ぎたくなぐなるな。」
回想終了
アキ「ヘヘヘッ…。」
春子「アキ~! ちょっと いらっしゃい!」
アキ「は~い!」
居間
よしえ「あっ お邪魔してます。」
アキ「えっ 何で?」
春子「見てよ これ ユイちゃんママが作ってくれたの。」
アキ「うわ~!」
よしえ「親バカで恥ずかしいんですけど こだわりだしたら 止まらなくなっちゃって。」
春子「ちょっと あんた これ 着てみなさいよ。」
アキ「でも…。」
春子「いいから早く! はい これ スカート。」
よしえ「着てみて サイズ合わなかったら 直すから。」
よしえ「あ~。」
春子「お~ いいじゃ~ん! サイズは?」
アキ「ぴったりです。」
よしえ「よかった~ でも ちょっと スカート短いわね。 パンツ見えちゃって 大変?」
春子「あ~ でもさ 見せパン はいときゃいいのよ。 ねっ? そうしなさい。 かわいい かわいい!」
アキ「これ デザインも お母さん?」
よしえ「ううん。 ユイがね 絵描いたの。 ほら これ。 見て。 あの子 ホントに楽しみにしてるの。 ほら ふだん 感情を表に出さないっていうか 体温低いっていうか お人形? ろう人形の館みたいでしょ。 フッ 言い過ぎ? でもね 最近 家に居て ず~っと歌ってるし もう アキちゃんの話ばっかり するのよ。」
よしえ「殻破りたいのよ あの子も。 でも 見た目が ああだし なかなか。 だから アキちゃんが 隣にいてくれて 本当に よかったって。 一人じゃ恥ずかしくて 何もできないけど アキちゃんが もっと恥ずかしい事 平気でやるから 何にも怖くないって。 アキちゃんがいるから 毎日が楽しいって言うの。 ありがとね アキちゃん。」
アキ「うばっ…!」
春子「『うばっ』って 何?」
アキ「(泣き声)」
よしえ「ごめん ごめん。」
春子「何 何? 泣いてんの?」
アキ「私 私… 頑張ります~!」
春子「汚い 汚い 汚い! 駄目 駄目 駄目! 拭いちゃ駄目 もう…。 泣くなら 脱ぎなさい これ。」
よしえ「その前に 写真撮らせて 写真。 ユイに送るから。」
春子「あ~ そうね。 撮ってもらいな 撮ってもらいな。」
よしえ「喜ぶと思うわ。」
春子「ちゃんと かわいい顔してね。」
よしえ「はい。」
(シャッター音)
よしえ「ありがとう!」
春子「大丈夫かな? これ。」