(秒針の音)
(ドアが開く音)
重森「ほかの子どもたちの手配は… つきません。」
池田「どうすんだよ? あ~ もう!」
重森「このままじゃ 放送に穴があいちゃう 責任持って辞めます。」
池田「バカ野郎 お前のクビなんか どうでもいいんだよ! 放送を楽しみにしている人たちを 裏切るんだぞ!? そこを感じろよ!」
春日部「おい! どうすんだよ? あと30分だぞ!」
裕一「池田さん。」
池田「とりあえず あの~… スケジュールが確実で 体が丈夫なやつ 誰だよ?」
重森「春樹と真知子です。」
池田「しかたないな。 2人に絞って 話 進める。」
重森「えっ? それで半年 もちますか? 時系列でいったら 2人は もうすぐ会っちゃいます。 偶然会った2人が再会するとなったら 来週から先 困るのは目に見えてます。 今日はは休止にして 立ち直る手だてを…。」
池田「駄目だよ~! 駄目! 穴は 絶対あけられないよ!」
重森「じゃあ どうするんですか!?」
池田「会いに行くけど… 会わない。」
一同「えっ?」
池田「擦れ違う。」
裕一「えっ?」
池田「いやいや… あの 2人とも 会いに行くんだけど 何か知らないけど 会えない! 切ないだろう?」
重森「いや 一度はいいんですけど そのあと どうするんですか?」
池田「いやいや もう そのころには ほかの連中も元気になって戻ってくるよ。」
重森「ロ… ロッパさんは しばらく時間がかかります。 それに… 途中で 三家族の話に戻すのも 難しいかと…。」
裕一「う~ん…。」
池田「じゃあ いいよ もう決めたよ! もう何度も何度も擦れ違う! もう会わない恋愛ドラマ! 画期的だろうが。 よし どいて! いや~ 画期的だよ。 ありえる? ありうるんだよ それが。 画期的だよ…。」
重森「男と女が出会わない恋愛ドラマなんて…。」
重森は…。
重森「怒られる…。」
間違っていました。
真知子と春樹に絞ったストーリーは 空前の大人気となりました。
真知子「自由倶楽部の 編集部でいらっしゃいますか? そちらに 後宮春樹さんという方が 勤めていると思うのですが…。」
(風の音)
春樹「もしもし? 何ですって? 雑音が入って よく分からないのですがね…。」
ラジオドラマの放送中に 異例の映画化。 こちらも大ヒット。 岸 恵子の真知子巻きをする女性で 街は あふれ返りました。
ラジオの放送がある木曜日の夜8時半には 銭湯に女性客がいなくなるという 逸話まで生まれました。
真知子「すみません。 こちらに後宮さんという方が 働いていると思うのですけど。 えっ? たった今?」
「真知子は 春樹の姿を追った。」
真知子「後宮さん… 後宮さん!」