池田「(ため息)」
重森「ロッパさんは 体の調子が悪いって あれほど言ったのに…。」
古山家
裕一「そうですか。 はい 分かりました。 すぐに行きます。 はい。」
音「どうしたんです?」
裕一「夏川さんとロッパさんが 病気で倒れたって。 入院したらしい。 池田さんが 今 大急ぎで 台本書き直してる。」
音「放送まで あと4時間。」
裕一「あの人なら なんとかするから。 行ってきます!」
音「行ってらっしゃい。 気を付けて。」
裕一「あっ 華 お帰り。」
音「お帰りなさい。」
華「疲れた…。 はあ…。」
このころ 華は 看護学校で実習の毎日でした。
NHK
裕一「池田さん どうですか?」
池田「話しかけるな。 今 いいとこなんだよ。 あっ… 前半の原稿だ。 春日部さんにも見せて。 何 笑ってんの?」
裕一「フフッ… 何でもない。 すみません。」
池田「こんな時に。」
裕一「すみません。」
池田「この野郎が…。」
裕一「春日部さん 前半部分 出来ました。」
春日部「おお…。 子どもたちの話を広げたのか…。 うまいな。」
裕一「いや~ 子どもが好きなんでしょうね。」
春日部「その割には家族を持たず 女は お盛んだけどな。 はあ?『音もなく ひらく玄関の音 ぬき足 さし足 しのび足』。 音もしてないのに 音って何だよ。」
裕一「いや~ これも大変ですよ。」
裕一 春日部「『惚れ薬を瓶から 出す音』。」
春日部「どうやって表現するんだよ これ。 何だよ 全くさ~! こういう時に… はあ~ だから 池田の仕事は嫌なんだよな~。」
裕一「惚れ薬だったら… 例えば ポンッて こう 栓が開いたあとに…。♬『(オルガンの音)』」
春日部「あるかも… うん あるかも!」
裕一「本当ですか?」
春日部「いや だったら あの さっきの音は?」
裕一「う~ん…。 春日部さん 扉が開く音を 風で表現してもらって…。」
春日部「あ~ 風?」
裕一「僕 低い音で 大きく…。」
春日部「いやいや あのさ でもさ ぬき足だぞ? 小さくだろ。」
裕一「いや 人って警戒してる時 足音 大きく感じません?」
春日部「あっ…。」
裕一「例えば 春日部さんが 飲み過ぎて 深夜 奥さんを起こさないように帰ってくる時。」
(きしみ音)
春日部「あ~ これ ちょっとのきしみが 大きく聞こえんだよね!」
裕一「いや~ でも 新しいものって ほら 無理難題から始まるじゃないですか。」
(秒針の音)
春日部「よいしょ…。」
池田「よし…。 遅くなった。 すまん。」
裕一「いいえ。 まだ1時間ありますから 大丈夫です。」
重森「お… おた… おた…。」
池田「どうしたんだよ?」
重森「子どもが…。」
池田「はあ!? おたふく!?」