裕一「今の収入で華を養えますか? 音楽で食えるようになってから 出直してきて下さい。」
音「お父さんも 何もなかったけどね。 裕一さん 忘れたんですか? 私にプロポーズした時 音楽の収入ゼロでしたよ。」
裕一「(小声で)ねえ… 銀行で働いてたから 収入はあったから。」
華「音楽で稼いでないなら アキラさんと一緒じゃない。」
裕一「一緒じゃない! あの時 僕は 賞をもらってた。」
華「アキラさんだって ステージやれば いっぱいお客さん来るよ!」
裕一「レコード契約だって あったんだ。」
音「あれは私が取ってきたんです!」
裕一「僕の実力が認められたとも言える!」
音「その契約金だって レコード売れない… というか レコードにもならないから 実質 借金だったし!」
華「えっ!? そうなの?」
音「そうよ!『船頭可愛いや』が売れるまで 却下された曲は 100曲くらい?」
裕一「21曲だよ!」
アキラ「すごいです! 100曲 却下されても作り続けるなんて。」
裕一「21曲だ。 君は 話を聞いてるのか?」
アキラ「21曲でも尊敬します!」
裕一「バカにしてるね 君は。」
音「そのヒットだって 環さんのおかげだったし。」
裕一「環さん? 環さんはね きれいな人だったんだよ。」
音「はあ?」
華「いずれにしても お父さんと 今のアキラさんって 大差ないんじゃないの?」
音「人気ある分 アキラさんの方がマシかも。」
裕一「女性関係も心配だ。」
音「裕一さん 失礼よ。」
華「そうよ。 撤回して!」
裕一「今まで 何人の女性と つきあってきた?」
音「あっ… アキラさん 言う必要ないから。」
裕一「別に問題がないなら言えるだろう?」
華「お父さんの挑発に乗っちゃ駄目。」
アキラ「16人です。」
音「ええ~っ!?」
裕一「じゅ…。」
華「どうして黙ってたの…。」
アキラ「聞かれなかったから。」
音「今 23でしょ? 初めて つきあったのが 16だったとしても 1年間で…。」
華「お母さん やめて。」
アキラ「多い?」
華「多いし 一回が短いよ!」
アキラ「華さんは何人なの?」
裕一「華 答えなくていい。」
アキラ「僕は何人でも平気です。」
裕一「私は平気じゃない!」
華「1人です! それも 今 思い返せば… あれ? つきあってたのかな?」
音「その16人の方々とは 真剣な交際だったの?」
アキラ「いえ 遊びの人もいました。」
華「正直に言えばいいってもんじゃないから。」
アキラ「今日は 将来 家族になるかもしれない 人の前だ。 うそはつけない。」
裕一「アキラ君は… うん まあ… 顔は そこまででもないがな 華があるよ。 ステージで歌う姿を想像すると まあ 女性にモテるだろう。 でもな 華 人気商売の人と結婚するということは 不安定な収入と 乱れた愛憎劇に 巻き込まれる可能性が高いんだよ。 もっと普通に いい人いるから。 華にはな 打ち込める仕事もあるんだから 何にも焦ることはないよ。」
アキラ「ちょ… ちょっと待って下さい。 確かに 僕は たくさんの女性と おつきあいがありました。 モテることを楽しみ 遊ぶことに 喜びを感じていた時期もあります。 そんな経験があるからこそ 華のすばらしさに気付きました。 華さんは特別です。 華さんを 僕に下さい!」
華「アキラさん…。」
音「だまされたらいけません! モテる男の常套句だわ。」
華「えっ!?」
音「私 昔 歌のために水商売をやっていたの。」
回想
音「音江です。」