玄関
裕一「はい。 誰だろう? こんな早くに。 はい。」
藤丸「ハアハア…。」
音「藤丸さん!」
裕一「どうして… えっ?」
藤丸「あの… 久志さん 来てませんか?」
裕一「来てないよ。 どうしたの?」
藤丸「いなくなったんです。」
裕一「えっ!?」
藤丸「差し入れを持っていったら… 倒れ込んでいて…。」
回想
久志「(せきこみ)」
藤丸「ちょっと! 何!?」
久志(せきこみ)」
犬井「お酒… すぐやめないと 死ぬぞ。」
久志「構わないよ。 この世に特に未練もないし。」
藤丸「心配なんで 朝まで付き添ってたんだけど ちょっと目を離した隙に 姿 消して…。」
藤丸「まさか あの人 変なこと考えてるんじゃ…。」
裕一「捜してくる。」
音「鉄男さんも呼びましょうか?」
裕一「頼む。 藤丸さん 大丈夫だからね。」
(戸を開く音)
闇市
裕一「久志… 久志! 久志! 久志…。 いた?」
鉄男「いや…。 俺 もう一回 あっち見てくるわ。」
長屋
藤丸「何だか もう… 疲れちゃった。 彼に関わってても すり減るばっかり。 でも 見捨てることできない。 バカよね。 私が あの人のこと 駄目にしちゃったのかな?」
音「そんなことんな。 藤丸さんがいなかったら 久志さん 今頃 どうなってたか。 ほかに どこか 久志さんが行きそうな所 心当たり ありませんか?」
藤丸「こっちの友達とは縁を切ってるい… お母さんも 随分前に亡くなって もう福島に帰ることはない…。 あっ!」
闇市
裕一「すいません…。 すいません!」
関「何だよ うるせえな~。」
裕一「すいません あの… 久志 見ませんでしたか?」
関「ああ?」
裕一「あの ほら… いつも一緒に マージャンしてる…。」
関「朝方 駅の方で見たな。」
裕一「駅?」
関「うん。」
裕一「駅…。」
音「やっぱり…。」
裕一「うん?」
藤丸「あの人 福島に行ったのかも。」
裕一「福島?」
藤丸「この前 酔っ払いながら言ってたの。 もうすぐ お父さん亡くなって1年だって。」
福島
裕一「あっ… すいません。 あの この辺りに 昔 議員してた佐藤さんのお宅 あったと思うんですけど…。」
「あ~… 佐藤さんげなら 随分前に 引っ越していきましたよ。」
裕一「どの辺りか ご存じですか?」