休憩室
編集者「今度出すワイド版の束見本です。」
茂「このサイズになる訳か。 大きくて ええですな。 厚みも相当ある。」
編集者「新書版や 文庫は 手軽で いいですけど 漫画のコマが あまりに小さいですから。」
茂「そうですなあ。」
編集者「うちのワイド版シリーズ 第1弾を 先生の 『河童の三平』で 飾れる事になって 僕 本当に うれしくて。 子供の頃 弊社の新書版で拝読して以来 『河童の三平』の大ファンなんです。」
茂「そうですか。」
編集者「『妖怪辞典』の続編が出るんですか。」
茂「夏に刊行の予定で 今 せっせと描いとるとこですわ。」
編集者「『あの世の辞典』 これ 僕も買いました。 この絵の迫力 圧倒されるなあ! やっぱり 大きいサイズは いいですね。 先生 うちのワイド版で 『悪魔くん』と 『鬼太郎』も続けて出しましょう!」
茂「はい。」
光男「いい流れが来たぞ…。」
台所
和枝「あ そうそう アシスタントさん 結婚 決まったんだって?」
布美枝「そうなんです。 相沢さんが。」
3人「ふ~ん。」
布美枝「それが…。」
靖代「どうかした?」
布美枝「仲人 頼まれてしまって…。」
3人「ふ~ん。」
布美枝「金屏風の前に座るかと思うと もう それだけで気が重くて…!」
(3人の笑い声)
靖代「自分が嫁に行く訳じゃあるまいし。」
布美枝「でも…。」
靖代「夫婦なんてものはね 仲人頼まれて 初めて 一人前になるんだよ。」
和枝「うちなんか もう3回もやったわ。」
徳子「うちも!」
靖代「布美枝ちゃん 心配しなくたって 仲人夫人の心得は 私達が しっかり教えて さしあげますわよ。」
布美枝「お願いします!」
3人「任せなさい!」
(一同の笑い声)
靖代「お茶だ お茶だ!」
和枝「ああ おじいちゃん しばらくねえ!」
徳子「ああ おじいちゃん!」
修平「おや どちらさんですかいね?」
和枝「嫌だもう。 乾物屋の~。」
修平「ああ… おかみさん!」
布美枝「あ お茶の用意しとったんですよ。 お父さんも一緒に どげですか?」
徳子「おじいちゃん このおまんじゅう おいしいんですよ~!」
修平「お~ まんじゅうか!」
徳子「どうぞ はい!」
修平「いただきますねえ。」
(一同の笑い声)
靖代「昔だったらさ ここで ひとくさり 講釈 たれてたのにさ~。」
徳子「たれてた たれてた!」
和枝「しなびてきちゃったわねえ。」
<布美枝の最近の心配事は だんだん元気がなくなってきた 修平の事でした>
玄関
川西志穂「ごめんください。」
光男「は~い!」
志穂「劇団アガルタの者です。 芝居の件で伺いました。」
光男「あ~ どうぞ あがって下さい。」
志穂達「失礼します。」
修平「芝居…?」