連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第66話「貧乏神をやっつけろ」

玄関前

布美枝「貧乏神 退散! ああ もったいない。」

茂「そこは ケチらず 景気よく まけ!」

布美枝「お父ちゃん。」

茂「ん?」

布美枝「お父ちゃんの 言うとおりだわ。 ほんとに… 世の中 不公平にできとるね。 一生懸命 生きとるのに どうして 次から次へと 困った事ばっかり起きるんだろう。 やっつけて下さいね。」

茂「え?」

布美枝「貧乏神。 うちや 戌井さんとこや 一生懸命 やっても やっても 報われん人達に 取りついとる 貧乏神。 お父ちゃんが やっつけて下さい。」

茂「むちゃ 言うな。」

布美枝「むちゃな事 ない! お父ちゃんは 漫画家なんですけん 漫画で ガツンと やって下さい!」

茂「ガツンとか…。」

布美枝「やられっぱなしは つまらんですけん。」

茂「そげだな…。 やられっぱなしでは つまらんな。」

仕事部屋

茂「『人は 昔から 祈り 願ってきた。 不運や 貧乏を 打ち砕く力が欲しい。 たとえ それが 悪魔の力でも…』。 もしも… 超人的な頭脳を持つ 少年が現れて 悪魔を呼び出す術を 使ったとしたら…。]

茂「この子が 地底から悪魔を呼び出し 世の中を変えていく。 『エロイムエッサイム エロイムエッサイム。 我は 求め 訴えたり』。 悪魔を しもべに使う 悪魔的頭脳を持った少年。 悪魔…悪魔くん。 そうだ! この子の名前は 『悪魔くん』だ!」

戌井「理想社会を目指して 世の中と戦う少年ですか…。」

茂「1万年に1人という 天才的頭脳で 地底から悪魔を呼び出すんです! 世の中は 不公平なもんです。 努力は 報われんし 貧乏人は つらい目にばっかり遭う。 幸福なんて どこにもない。 だったら せめて 漫画の中だけでも 世界を変えたい。 そうは 思わんですか?」

戌井「はい。」

茂「昔から 魔法に興味を持っとって 資料も集めとるんです。」

戌井「はあ~ すごいな。」

茂「話なら 幾らでも作れます。」

戌井「やりましょう! どうせなら 思い切って 長編大作をやりましょう。」

茂「大作というと?」

戌井「まずは 5冊。 うまくいったら 続編 さらに 続編で 出していきましょう。」

茂「ちょっと待ちなさい。 これは 漫画家としてではなく 北西出版 特別顧問として 言いますが 長編で 5冊というのは… あんたのとこには 荷が重すぎる。 それだけ 製作費も かかるんですよ。」

戌井「借金してでも 金は集めますから。」

茂「いや 無理をしては いけんです。」

戌井「いや しかし…。」

布美枝「失礼します。 すみません。 お茶の葉 切らしてまして 白湯で申し訳ないんですけど…。」

戌井「いただきます。」

茂「何か つまむもの ないのか? 大根漬け あったろう?」

布美枝「もう なくなりました。」

茂「え? あ…。」

布美枝「そうだ カボチャの種 いりましょうか?」

戌井「あの もう いいですから。 大丈夫です。」

布美枝「バカにしたもんじゃないですよ。 いったら おいしいんですから。 すぐ 作ります。」

戌井「水木さん… 勝負の時ですよ! 零細出版としては 冒険なのは 分かります。 しかし チマチマチマチマ 内野安打を打っていたんでは 今の悪い状況は 変わらない。 ホームランです。 大ホームランを かっ飛ばして 逆転を狙いましょう。 『悪魔くん』に 僕らの貧乏を 叩きつぶしてもらいましょう。」

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