美智子「シベリアにいたのよ。 収容所に。 戦争終わってから 3年半も。」
キヨ「子供に会うのを励みみ 苦しい中 生き延びてさ やっとの思いで 復員してきたら…。 政志も がっくりきただろうよ。」
美智子「今でも つらいみたいなの 赤ちゃん見るの。 出征前に 最後に抱いた 子供の事を思い出してね。」
布美枝「そうだったんですか…。」
靖代「聞いたわよ ちょっと!」
徳子「また来たんだって? あの圧力団体!」
和枝「今度 来たら 追っ払ってやろうか! 」
ミチコ「やめてよ 余計ややこしくなる。」
3人「藍子ちゃん かわいい!」
キヨ「うるさいのが やって来た! あたしゃ 退散だ! どっこいしょ。 店番だよ。」
3人「うわ~! かわいい!」
(小鳥の鳴き声)
水木家
玄関
布美枝「ただいま~! お兄さん?」
居間
布美枝「あ~ いらっしゃい!」
雄一「あ~ どうも。」
布美枝「あれ? お一人ですか?」
雄一「ええ。」
布美枝「お姉さんや 波子ちゃん達は?」
雄一「風呂もらいに来たんじゃ ないんですよ。 今日は ちょっと 相談事があって。」
布美枝「ああ…。」
布美枝「え? 会社が倒産?」
雄一「うん。」
布美枝「けど お兄さんのとこは 金属加工の会社で 今は 調子がええって…。」
雄一「う~ん。 好景気に浮かれて 無計画に増産した結果が 大量在庫 抱えての倒産ですわ。 ねえ…。 『競争に勝つためとはいえ 背伸びしちゃ 会社は 長続きせん』と 上に進言したんだがね。」
茂「これから 大変だな。」
雄一「いや~ 倒産も多いが 求人も多いからな。 またすぐ 決まるだろ。」
茂「うん。」
雄一「しかし ちょっと ここ1か月 2か月が厳しいわな。 次が決まるまで 少し真空地帯ができるから。」
茂「うん。 ちょっこし 融通できんか?」
布美枝「え?」
(雄一と茂の笑い声)
布美枝「あっ! 藍子が泣いとる!」
茂「えっ? いや 泣いとらんぞ。」
布美枝「泣いとりますよ。 ちょっと 見てきます。」
雄一「どうぞ。」
茂「え? おい おい! ちょっと 待っとってくれ!」
雄一「おう。」