安東家
居間
周造「てっ!」
吉太郎「てっ!」
ふじ「てっ!」
もも「てっ!」
かよ「てっ!」
はな「ごきげんよう。 ただいま帰りました。」
吉平「グッド アフタヌーン。 はな。」
はな「グッド アフタヌーン お父様。」
リン「おまん 本当に あのはなずらか?」
はな「ええ。 私 そんな変わりました?」
周造「そうさな… どこのお嬢様かと思ったずらよ。」
ふじ「お帰り はな。 大きくなったじゃんね~!」
はな「おかあ! おじぃやん。 兄やん。 かよ。 もも。 おばさん。 朝市。 会いたかったさ!」
ふじ「あ~!」
ふじ「さあ どうぞ。」
はな「うわ~! おいしそう!」
かよ「おかあ これ こせえるのに 昨日から あっちこっち駆け回って 大変だっただよ。」
はな「ありがとう。 おらの好きなんばっかじゃん。」
周造「ほいじゃ 頂きます。」
一同「頂きます。」
はな「うめえ~!」
吉太郎「毎日 華族のお嬢様たちと 同じ ごちそう食ってたら ほんなもん 口に合わんら。」
はな「ううん! おかあの ほうとうは 日本一じゃん!」
吉太郎「無理しんでいい。」
はな「兄やん…。」
吉平「ほりゃあ はなは 寄宿舎で 肉だの卵だの ぜいたくな食事 させてもらっとるが…。」
もも「肉だの卵 毎日け?」
吉平「おう。 ほの分 苦労して 朝から晩まで勉強しとるんじゃ。」
かよ「おらたちとは まるっきし違う世界の話じゃん。」
吉平「勉強は うんと努力して 頑張ったやつが勝つ。 身分や金持ちかどうかなんて 関係ねえ。 はなは 本当 よく頑張ってるだよ。」
はな「おとう。 せっかくの ごちそうが 冷めちもうよ。」
吉平「おお。」
ふじ「みんな た~んと食えし。 はなの好物の草餅もあるずら!」
はな「てっ! 草餅!」
ふじ「おじぃやんと吉太郎が ついてくれただよ。」
はな「ずっと食べたかったさ~! ありがとう! うめえ~!」
<せっかく焼いたクッキーですが はなは みんなに渡すのを ためらっていました。>
徳丸商店
三郎「見たこんもねえような べっぴんでごいすか。」
武「同じ汽車に乗り合わせて その娘っ子も甲府で降りただ。 おら あの人と お近づきになりてえ。 どこに住んでるだか 見つけだしてくりょう。」
3人「はっ!」
武「着てるもんが上等だったから きっと 大地主か いいとこのお嬢様ずら。」
(戸が開く音)
徳丸「ここいらに うちより 大地主なんか いる訳ねえずら! 武! ほんなこんより この成績は何でえ! おなごに うつつ抜かしてる場合け! 勉強しろし!」
武「はい…。」