優子「お母ちゃん。」
糸子「ん?」
優子「あとで 話あんねん。」
糸子「何や?」
優子「あとで。」
糸子「ふ~ん。」
オハラ洋装店
木之元「おお かにや! かに!」
木岡「かにや!」
居間
一同「あ~ 出た~!」
糸子「かにや~。」
聡子「かにや かにや! やった~!」
「さあ食べよう。」
糸子「かにも 喜んでるわ。」
優子「ただいま~。」
木之元「おっ 優ちゃん!」
糸子「聡子も食べり。」
聡子「うん。」
八重子「あれ 優ちゃん あんた どこ 行ってたん? ちゃんと 御飯 食べたんか?」
玉枝「ここ座り ここ!」
八重子「優ちゃんの 下さい。」
糸子「お皿 取って。」
優子「お母ちゃん。」
糸子「ん?」
優子「うちな お母ちゃんに お願いがあんねん。」
糸子「そんなん あとで ええやないか。 今 祭りなんやさかい。」
優子「ううん。 みんなにも 聞いてもらいたいんやし。」
糸子「何や?」
優子「うち 実はな 洋裁学校の先生から『東京の学校に行った方がええ』て 言われてん。」
糸子「うん?」
優子「先生が言うにはな うちは 大阪に おったら もったいないんやて。『東京で もっと本格的に スタイル画を学びなさい』て。」
節子「すごいやん!」
優子「そんで 東京の有名な先生を 紹介してもろて ほんまに うちが行ってええもんか どうか スタイル画を送ってみてん。 そしたらな…。」
八重子「何て?」
千代「何て?」
優子「『すばらしい才能や! 是非 来なさい!』って 言って下さったの。」
八重子「いや~ すごいな!」
八重子「見せて 見せて! 優ちゃん これ すごいで!」
「うわ~ すごい すごい すごい!」
八重子「こんな才能 あったんけ!」
木之元「優ちゃんが 描いたんけ? すごいやんかあ!」
優子「お母ちゃん。 うちは 今度こそ 本気です。 東京へ 行かせて下さい。 お願いします!」
(うなずく糸子)
玉枝「偉い…。 偉いわ 優ちゃん。」
美代「ようやった!」
(拍手)
木之元「東京ゆうたら あの… 上野け?」
優子「お母ちゃん… おおきに! おおきに お母ちゃん! うちな 頑張るよって!」
聡子「すごい。 すごい 優子姉ちゃん! 頑張ってな!」
2階 寝室
優子「ええか あんたら。 お姉ちゃんは 東京 行ってくるさかい その間 お母ちゃんを しっかり助けてや。」
聡子「うん。 分かった。」
優子「それからな。 この店は 姉ちゃんが継ぐよって あんたらは 何でも 自分の店の進みたい道に進んだらええ。」
聡子「うん。 あ うち テニスの選手 なれるよう 頑張るわ。」
優子「うん 頑張り。 そのかわり やるんやったら 本気でやらんと あかんで。」
聡子「うん。」
優子「直子もな 絵描きになりたいんやったら 本気で 本物になりや。」
オハラ洋装店
糸子「優子~ そろそろ行くで~。」
優子「は~い!」