オハラ洋装店
優子「うわ~! 忠岡堂のおまんじゅう!」
糸子「東京の人らに食べてもらい。」
優子「ありがとう! 原口先生も びっくりされていたのよ。 岸和田には こんなに おいしい おまんじゅうが あるんですかって。」
松田「どないしましたか?」
千代「いや ちょっとな。」
優子「はは…。」
<優子は 最後の最後まで 原口先生を連発しながら 東京へ戻って行きました>
糸子「気ぃ付けてな!」
優子「行ってきま~す!」
一同「行っちょいで!」
糸子「行っちょいで~!」
泉州繊維商業組合
糸子「こんばんは!」
三浦「お~う! どうや 元気やったけ?」
糸子「おかげさんで!」
三浦「う~ん。」
三浦「元気やったで 周防も。」
糸子「はあ ほうですか。」
三浦「こないだな 紳士服の経営者の 会合があってな。 そこに 顔だしよった。」
糸子「はあ。 うちも 恵さんが月に一回 集金に行ってるんですけど しっかりした ええ店になってるて 言うてました。」
三浦「うん。」
斉藤「お邪魔します~!」
糸子「あ 斎藤さん。 こんばんは!」
<このごろは 繊維業も ごっつい栄えてきています。 女の経営者も 今はもう うち1人やありません>
「死にはったな ディオール。」
糸子「せや もう びっくりしたで!」
「うちも あの日は 泣いて 仏壇 拝んだわ。」
「会社は やっぱし サンローランが継ぐんやてな。」
「サンローランて?」
「ディオールが育てた 若いデザイナーや。 まだ21歳。」
「21?」
糸子「むちゃやで! ほんな若い子に あのディオールの 後釜なんか 務まるか?」
「なあ!」
「いや せやけどな 年なんか 関係ないんやて。」
「ほんま?」
「ふん やっぱし とにかく デザイナーちゅうんは 才能が大事なんやて。 せやから それさえあったら…。」
糸子「これ どこのん?」
「これ?」
糸子「フランスやて!」
<いずれも 女手一つで 店やったろちゅう経営者 みんな そら 研究熱心で>
糸子「イタリア? はあ いい色やわ。」
「へえ~!」
糸子「何や?」
北村「どんな生地かな思て 見に来ただけやないか。」
糸子「あんたには関係ない。 レディーメードで扱える生地ちゃう。」
北村「何や お前 こら~!」
「そんな いけず言わんと どうぞ 見て下さい 北村さん。」
北村「なあ!」
「これ フランスの…。」
北村「のいて ちょっと! あ~ やっぱり上等やの これ。」
「北村さん 北村さん! これこれこれ!」
北村「のいて!」
「イギリスですて これ。」
北村「イギリスけ? これ。 はるばる来たて。 これ全然ちゃうな これ!」
糸子「ほんまに 分かってんけ?」
北村「ようこそやの やっぱり これ! ようこそ いらっしゃったわ。」
糸子「いや これ! ええわ これ!」
北村「ええのう これやっぱり! これ きれえや!」
糸子「これが やっぱりええと思うわ。」