栄之助「せやけど ほんまに ええサロン 出来ましたね。」
糸子「ふん せやろ。」
栄之助「これ だんじりの時とか ええのん ちゃいますか?」
糸子「ところで。 どないや 譲。 ちょっとは 元気なったか?」
栄之助「ああ。 おふくろさんが 亡くならはった時よりも 今回の方が だいぶ参ってますわ。」
糸子「ほな 連れてき あんた。 今度 な!」
栄之助「はい。」
<先月 譲のお父ちゃんが 亡くなりました>
オハラ洋装店
糸子「はれ 来たか。 フフフ!」
譲「先生!」
糸子「ええ~!」
譲「すんません。 いや 先生の顔 見たら 気ぃ緩んでしもた。」
糸子「はれはれ 大の男が かなんな もう!」
(泣き声)」
糸子「ほら!」
譲「すんません。」
糸子「これ 台拭きやな。 きれいなタオル どこや。」
栄之助「いや もう…。 台拭きで ええんちゃいますか 先生。」
糸子「そうか。」
譲「すいません!」
リビング
譲「いや~ 参りました。 おふくろん時かて こたえてたはずやけど 今回ほどと 違いましたわ。 年のせいですやろか。」
糸子「は? あんた 今 なんぼや?」
譲「45です。」
糸子「あと倍ほど生きてから ほんな言葉は 使い。」
譲「はい。」
糸子「そら あんたのお母ちゃん時と ちゃうんはな あんたは いよいよ ほんまに 自分の力だけで 会社と家族 背負わなあかんよう なってしもたんや。 その不安と怖さに こたえてんや。」
譲「そのとおり… そのとおりです。」
糸子「けどそら 誰もが 通らんならん 道なんやで。」
譲「はい。」
(泣き声)
糸子「何や あんた?」
栄之助「へ?」
糸子「あんたまで 泣く事ないがな。」
栄之助「いや… 僕もですやろか?」
糸子「あ?」
栄之助「いつか 僕も 通らなあかんのですやろか?」
糸子「そら あんたのお父ちゃんらかて 不死身やないやろしな。」
栄之助「何や 切ないですね。」
糸子「はあ! まだまだや。」
栄之助「え?」
糸子「あんた 自分のお父ちゃんの事 思い出してみ。 あのころ 会長 確か65~66や。 ほの年で 大事な奥さんに 先立たれて どんなけ寂しかったか 考えてみんかいな。 ほんでも アホ息子と 社員らのために どないか立ち上がって 最後の最後まで 支えてくれはったんや。 あの立派なお父ちゃん 見習うて やっていき!」
譲「無理です。」
糸子「はあ?」