木之元電キ店
♬~(ラジオ)
(電話の呼び鈴)
糸子「はい 木之元電キ! はい… あっ おばあちゃん。 どやった? ああ… あった? ミシン。 ああ よかった~! うん… うん! ほな もう 今日から そっち行くわ! うん… うん… ほなな!」
(笑い声)
糸子「おおきに おっちゃん!」
木之元「あっ おう!」
小原家
座敷
糸子「ただいま!」
善作「おう。 どやった? パッチ屋。 ミシン 貸してくれるてか?」
糸子「あかんかった。」
千代「えっ!」
糸子「そやから 神戸 行くわ。」
善作「神戸?」
糸子「うん。 今 おばあちゃんに 電話して聞いたらな『なんぼでも使い』て 言うてくれたさかい うち とにかく あっちで 縫製 始めるわ。 残りの生地は 裁断 済んだら 静子にでも届けさせて。」
千代「はあ…。」
ハル「そら よかった。」
糸子「出来た分は?」
ハル「これこれ これが…。」
千代「ほな あっち泊まるんか? 寝巻きやら…。」
糸子「ええ! 全部 もう あっちで おばあちゃんが『そろえといちゃる』って 言うてくれたさかい。」
千代「はあ~!」
糸子「『あんたは とにかく 縫うもんだけ 持っちょいで』って。」
千代「う~ん よかったな。」
ハル「よかった よかった。 ほれ! はよ 行っちょいで!」
善作「あかん!」
糸子「えっ?」
善作「わしは 許さへんど。」
糸子「はあ?」
善作「神戸なんぞ 行くな!」
糸子「『行くな』て… 行かな ミシン ないんやで。 ミシンなかったら 縫われへんやで。」
善作「じゃかましい! 行くなちゅうたら 行くな!」
糸子「むちゃくちゃや そんなん。 お父ちゃんかて ミシン…。」
(たたく音)
善作「口答えすな! ええか? 神戸なんぞ行ったら 二度と うち 入れへんぞ!」
糸子「そんな…。 どないしよ…。」
ハル「行ってこい!」
糸子「えっ? けど…。」
ハル「あとは うちらが なんとかする。」
糸子「けど…。」
ハル「いつもの ひがみ根性や。 気にする事 あらへん。 今日は あんたが正しい。 神戸へ はよ行っちょいで。」
静子「行っちょいで 姉ちゃん。」
清子「行っちょいで。」
糸子「お母ちゃん… 大丈夫か? お父ちゃんは お母ちゃんに 一番当たるで。」
千代「心配しな。『へえへえ すんません』ちゅうて 聞いとったら ええだけや。 なあ!」
ハル「ほれ ほれ! ああ これも。」
千代「それも はい はい。」
電車
<そやけど うちには 迷てる暇も ないよって とにかく 電車に飛び乗りました>