仏間
(読経と木魚の音)
<ごめんな 奈津 来てしもて お顔 拝んだら とっとと 帰るよってな>
紳士服・ロイヤル
店内
<ところで あれから 店は えらい事になってました。 川本さんが言うたとおりです。 サエのドレスを見た 他の踊り子さん達が 一斉に 注文に やって来たんです>
試着室「ほな 頼むよって。 しつこいようやけど なるべく はよしてな。」
<踊り子さんらは みんな とにかく 一日もはよ ドレスで踊りたいらしい>
店主「ええか 1着 3日で こさええ。」
糸子「3日?! そら むちゃです!」
店主「あない 客がみんな 急いでんや。」
糸子「けど あんまし慌てても 仕事が 雑になります。」
店主「かめへんわい! どうせ ダンスホールで 踊り子が着るようなもんや。 さっさと作って とっとと 売ったった方が ええんじゃ。 そらな 背広は きちんと こさえな ならんど? 洋服屋は ええ背広 こさえて なんぼやさかいな。 けど ドレスみたいなもん 女 子供が 遊びで着る服や。 ちゃったと やれ。 めりはり つけえ!」
「大将 ちょっと。」
店主「うん?」
<大将は ドレスを ばかにしてます。 服の中で 背広が 一番偉いと思てる>
店主「ああ…。」
<けど お客がみんな はよ 欲しがってんのも確かです。 どないか それに 応えちゃられへんもんか…>
<そこで…>
糸子「これ ちょっと 持っとって下さい。 ちょっと じっとしといて下さいね。」
<お客さんの体に 直接 布を当てて 裁断する事にしてみました。 こないしたら 型紙を作るちゅう 手間が 一個 省けて その分 はよ仕上げる事が できるんやけど…>
糸子「いきますよ。 はい!」
「いや~! ごっつ ええわ! おおきに!」
糸子「大丈夫や。」
「うわ~!」
<よし この方法は いけんで!>
店内
「おおきにな!」
店主「また どうぞ。」
糸子「毎度 おおきに。」
店主「その調子や。」
糸子「はい。」
<大将は うちが言われたとおり ちゃんと 手ぇ抜いてると思て 上機嫌でした。 手間は 省いたけど 手ぇは 抜いてへんよってな!>
作業場
糸子「すんません。 ミシン 使わせてもうて ええですか?」
「見て分からんのか? 使てるやろ!」
糸子「いや けど 今 それ やってるやないですか?」
「また すぐ使うんじゃ!」
勝「こお 使い。」
糸子「はあ 助かります!」
「こら 川本!」
勝「はい!」
「お前は さっさと 自分の仕事 仕上げんかい!」
勝「はい。」
「女が オモチャ 作んのに 譲っとる場合け!」
糸子「オモチャ…?!」
<オモチャ?! ドレスの事を オモチャて言いました?!>