連続テレビ小説「カーネーション」第38回「移りゆく日」【第7週】

居間

善作「この煮つけ 何や辛いな。」

糸子「お父ちゃん。」

善作「あん?」

糸子「話あんねん。 仕事の事なんやけど。 あんな 今の洋服屋で うち かなり お客つかめてるんや。」

善作「ふ~ん。」

糸子「うちに 客がついたよって 洋服屋 ごっつ 儲かってる。 大将かて 毎日 そろばん はじいちゃ ホクホクしてる。 けど うちが ほんまに 繁盛させたいんは うちの店や。 うちの 小原…。 小原洋裁店や。 今のドレスの仕事が 一段落したら ロイヤル 辞めさしてほしい。 ほんで もう一回 ここで 洋裁屋 始めさしてほしい。」

善作「小原洋裁店…。 お前 何 勝手に 看板 変えてんねん。 うちはな 小原呉服店じゃ。」

糸子「そやけど もう 呉服も置いてへん。」

善作「あかん!」

糸子「え?」

善作「お前 ちょっと 客が ついたくらいで 何 調子 乗ってんねん。 ええか? わしは お前に 商売の 勉強してこいちゅうたはずや。 今の店で お前がやってる事は 相も変わらん。 ただの職人ごっこやないけ。 わしは お前に『商売人として 成長せえ』ちゅうたはずや。」

糸子「もう成長した!」

善作「してない。」

糸子「ほんなら うちが どうなったら認めてくれんの? うちは 今の洋服屋を 十分 繁盛さしてる。 それを認めてもらえへんやったら どないしたら認めてくれんのか うちは 分からへん。」

善作「せやなあ! もう一軒やなあ。」

糸子「はあ?」

善作「もう一軒 別の店 繁盛させたら 認めてやらん事もない! ハハハ! うん!」

<くそ~! この酔っ払いが! そいでも お父ちゃんが そない言うかぎり うちは 従うしかありません>

紳士服・ロイヤル

店内

店主「辞める?!」

糸子「はあ。」

店主「『はあ』やないよ! 何でやねん?! 注文 どないすんねん?」

糸子「いや ドレスは とりあえず 最後の お客さんまでやらしてもらいます。」

店主「洋服は? 洋服の注文も お前 調子よう 取っちゃあったやないか? あれ どないすんねん?」

糸子「それは お客さんに 謝るしかないです。」

店主「謝るって お前… 謝って済む事と 違うど。 どういうこっちゃ!」

糸子「すいません!」

店主「あ そうか 分かっと。 ちょっと 客ついたもんやさかい 調子乗って 独立け。」

糸子「ちゃいます。」

店主「嘘つけ!」

糸子「ちゃいます! ほんまは そのつもりやったけど。」

店主「何や。」

糸子「父に言われて 他の店 繁盛させなあかんのです。」

店主「何じゃそれ? 何のために?」

糸子「うちが聞きたいです。」

安岡家

居間

(小鳥の鳴き声)

奈津「こんにちは! こんにちは!」

玉枝「あ 奈ちゃん。」

スポンサーリンク







シェアする

フォローする

スポンサーリンク