連続テレビ小説「カーネーション」第53回「いつも想う」【第9週】

川本家

玄関

(吹雪の音)

糸子「直子! 直子!」

(戸をたたく音)

勝「お~い! お~い!」

(戸をたたく音)

勝「お~い! 開けてくれ!」

糸子「ひょっとして? な! これ 直子が…?」

亘「どちらさん?」

勝「俺や 勝や!」

亘「兄ちゃん? どないしたん?」

勝「ちょっとな。 直子の顔 見に来たんや。」

亘「今 ちょうど寝ついたとこや。」

勝「ほな ちょっと寝顔だけでも。」

亘「いや…。 ようやっと 直ちゃんも 慣れてきたとこや。 万が一にも 目ぇ覚まして 親の顔なんか見てしもたら『元の木阿弥』で また手ぇ つけられへんようなら…。 すまんけど 今日は このまま帰ってくれ。」

(吹雪の音)

山道

糸子「きゃっ!」

(泣き声)

<この 万年 上機嫌の人が 泣いてます 人の親んなるっちゅうんは 何や どっか哀れな事なんやなあ>

小原家

居間

静子「で 結局 昨日 何時に帰ってきたん?」

糸子「昨日ちゃう 今朝の4時や。」

昌子「何で 大将だけ ここ 霜焼け なってんやろ? 先生 どうもなってへんのに。」

勝「ふん? 何でやろな?」

<あんた だらだら 涙 流しとったからや>

オハラ洋装店

(小鳥の鳴き声)

河瀬「正真正銘 こんで売り切りや。 やあ ほんまにおおきにな あんた。 恩に着るで!」

糸子「はいはい。」

河瀬「まさか 売り切れるとは 思わんかったえけどなあ。 はあ~ こんで なんとか 年越せら。 ハハハ! よいしょっと!」

糸子「ちょっと大将!」

河瀬「え?」

糸子「また すぐ そこに お客さん 来るんやさかい 生地置いたら さっさと帰ってや。」

河瀬「ハハハ! さすが繁盛してる店は 言う事がちゃうのう!」

糸子「忙しいんや! まだそんだけの生地 大みそかまでに 服にせんならんやさかい!」

河瀬「はいはい。 ほな 失礼するわ。 ほんまにおおきにな。 おおきに!」

糸子「おおきに!」

<そっから うちは もう 夜も ほとんど寝られんと 御飯だけは しっかり食べて>

糸子「はあ~ でけた!>

山道

(鳥の鳴き声)

糸子「直ちゃん! 直ちゃん! 直子! 直子! おいで!」

勝「直子! わしも。 ちょ わしも代わってくれ!」

糸子「嫌や。」

勝「ね…。」

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