糸子「どないしたん?」
昌子「夜釣り?」
糸子「え?」
昌子「先生 ほんまに 夜釣りで ええんですか?」
糸子「何が?」
昌子「よう考えて下さい。 大将が 一体 何を釣りに行ってんのか。 先生。」
糸子「面倒くさい。」
昌子「面倒くさい?」
糸子「夜釣りや言うてんやさかい 夜釣りでええやんか。」
<面倒くさいっちゅうんも 何やけど まあ 正直 どうでもええ。 そんな事よりも 昨日の仕入れ 今日の注文 今月の損益 家族の健康。 戦争は この先 どないなるんか 考えんとあかん事が 多すぎて いちいち 勘ぐってる暇なんか ないっちゅうんが ほんまのとこでした。>
<勝さんのええとこは どんだけ 1階が繁盛しちゃあっても ひがまへん 妬まへん ほっといても 上機嫌。 とにかく カサ高ないっちゅうだけで うちには 十分 都合のええ旦那や そう思てました>
オハラ洋装店
糸子「う~ あ~! うん…。 あ…。 あ 直子は?」
勝「ああ 寝た。」
糸子「はは どおりで静かやな。」
勝「なあ。」
糸子「うん?」
勝「たまには…。 歌舞伎でも 見せちゃろか。」
糸子「え? 歌舞伎?」
勝「うん。 行こうよ 一緒に。」