連続テレビ小説「カーネーション」第62回「切なる願い」【第11週】

オハラ洋装店

<日がな一日 赤ん坊は 泣く 直子は暴れる お父ちゃんは かんしゃく起こす。 お母ちゃんは メソメソ おああちゃんは ヨロヨロ>

糸子「こっちまで ガタ来てまいそうやわ。」

<こんで せめて 商売だけでも うまい事 いってくれりゃ ええのに 年明けすぐ 衣料切符の点数が 引き上げられてから お客は めっきり 減ってしもてました>

糸子「あ~!」

澤田「ごめんください!」

「ごめんください!」

糸子「どうも。」

澤田「小原さん 1月に 衣料切符の点数が 引き上げられたん 知ってますね?」

糸子「はあ。」

澤田「そやけど まだまだ ぜいたくです。 銃後を守るにあたって 我々は もっと 質素倹約に 努めなあきません。」

糸子「はあ。」

澤田「小原さんも ご商売柄 儲けの事しか 頭に ないかもしれませんけど ここは しょうもない 我欲なぞに 溺れず むしろ 買い物に来た人々を戒め 何も売らずに帰すぐらいの 気概を見せて下さい。 小原さん? どないかしたんですか?」

糸子「いや… まあ…。 こないだ 子供を産んだばっかしで。」

澤田「まあ 産後の肥立ちでも 悪いんですか?」

糸子「その前の日ぃに 火事があって お父ちゃんが 大やけどして ガラス割れて 畳が水浸しんなって おばあちゃんが 腰抜かして おかげさんで 今 家ん中 ガッタガタですわ!」

澤田「まあ そら大変でした! けど まあ こう言うたら 何ですけど ふだんの心がけちゅうか 何事も因果応報 悪い事が続く時は 大概 自分に 原因があるもんです。 ご自分を省みる よい機会やないんでしょうか? お大事に! ほな 失礼します!」

「お大事に!」

(舌打ち)

糸子「さっすがやな おばはん。 せやけど 二度と うちの敷居…。」

澤田「小原さん!」

糸子「またぐなっちゅうたやろ! あっ!」

<因果応報 確かに おばはんの説教にかて 一理ある。 うちも 時々 自分を省みんといかんな>

台所

光子「どこまで むいたらええか 分かれへん。」

清子「どれ?」

糸子「ほれにしても あんたらなあ。」

清子「え?」

糸子「何でもかんでも ゆでたらええ ちゅうもんちゃうで! 焼いたり 炊いたり たまには ちゃう事も せんかいな。」

清子「せやけど うちら あんまし 料理した事ないよって。」

糸子「いつまででも お母ちゃんに 甘えてるからやろ? そうゆう事を ちゃんと できるようにしとかな。 嫁に行って困んのは あんたらなんやで。」

2人「は~い。」

千代「糸子。」

糸子「ん?」

千代「悪いけど また頼むわ。」

糸子「うん ちょっと待っといて。」

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