糸子「あ… えっと…。 それは… え~っと…。 あ いや とにかく 今は このディオールです!」
周防「はあ ディオール。」
糸子「パリのデザイナーなんやけど この人が 発表してくる服に 世界中が 注目してるんです。 けど まあ まだ どっこも 生地不足で なかなか 作れてはないんやけど 世界中の女が着たがってるんです。」
周防「そいやったら…。」
糸子「は?」
周防「こいから うちん工場の作るもんも こいにか型にした方が よかって事ですか?」
糸子「はあ… そうです。 そない思います。」
周防「ふ~ん。」
糸子「けど 全く同じもんは 無理です。 見て下さい。 この ほら この生地の量。」
周防「あ~ こいやったら いっぱい いるたいねえ。」
糸子「値段 下げて 売ろう思たら そら ここまで 生地は ようさん使えません。 けど 長さやら 雰囲気は なるべく近いもんにした方が ええと思うんです。」
周防「そげんですね。」
糸子「あ 描いてみましょか?」
周防「あ はい。 お願いします。」
小原家
居間
昌子「先生 どないやったんですか? 昨日。」
糸子「うん?」
昌子「工場の監督ですよ。 よさそうな人でした?」
糸子「う~ん… アハハ…。 うん まあまあやな。」
昌子「ふ~ん。」
糸子「勘がええしな 話も通じやすいし まあ 苦労は せえへんと思うわ。」
昌子「よかったですねえ。」
千代「昌ちゃん お代わり いるか?」
昌子「はあ お願いします。」
糸子「あの あれやで 周防さんちゅうな… あの…。」
2人「周防さん?!」
糸子「あ… 覚えてるか? だいぶ前に ちょろっと 店 手伝うてもうた事 あるやろ。」
昌子「当ったり前やないですか! 周防さん?!」
千代「へえ~。 いや~ 会いたいなあ。」
昌子「会いたいですねえ。」
千代「なあ。」
昌子「うちも 会いたいわ。」
千代「そら よかったなあ。」
糸子「うん。」
井戸
<うち さっき… 周防さんに会うた事 みんなに隠そうとした 何でや? 後ろめたかったからや>
糸子「何がや? 何も 後ろめたい事なんか…。」
<いや ある。 ごっつう 後ろめたい事が 心の奥の方に… あ~ 何 考えてんや! あかん あかん あかん あかん!>
糸子「うん! 仕事や… 仕事!」