連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第75話「1983」【第16週】

虚無蔵「めっそうもない。」

ひなた「えっ?」

虚無蔵「拙者 ただの大部屋俳優でござる。」

ひなた「大部屋俳優?」

虚無蔵「名もなき有象無象と心得られよ。」

ひなた「え… 有象無象…?」

虚無蔵「粗茶でござるが。」

ひなた「あっ ありがとうございます。」

虚無蔵「寺子屋通いか?」

ひなた「寺子屋? あっ 学生いうことですか?」

虚無蔵「さよう。」

ひなた「はい。 高3です。」

虚無蔵「夏の休みか。」

ひなた「はい。 夏休みです。」

虚無蔵「休みの間 ここで骨を折ってみぬか?」

ひなた「骨を折る? えっ 嫌です。 そんな痛そうなこと。」

虚無蔵「戯れを。」

ひなた「えっ?」

虚無蔵「働かぬかと申しておる。」

ひなた「あ… バイトいうことですか?」

虚無蔵「さよう言いかえて差し支えない。」

ひなた「何したらいいんですか?」

虚無蔵「座っておればよい。」

ひなた「どこに?」

虚無蔵「ここに。」

ひなた「ここ?」

虚無蔵「うむ。」

ひなた「えっ…。 何のためにですか?」

虚無蔵「それは…。 いずれ分かる。」

ひなた「え~? ヒント。 もうちょっとヒントをください。」

虚無蔵「せんだっての御前芸比べで そなたを見た。」

ひなた「えっ? ああ コンテストのことですか?」

虚無蔵「さよう。 落選は残念であったが…。」

回想

ひなた「んっ… たあ!」

「ぐわあっ!」

回想終了

虚無蔵「そなたが 時代劇をめでていることは伝わった。」

ひなた「見てはったんですか。 はあ…。」

虚無蔵「おひな。」

ひなた「おひな?」

虚無蔵「このままでは時代劇は滅び去る。」

ひなた「えっ?」

虚無蔵「拙者は そなたに 時代劇を救ってほしいのだ。」

ひなた「時代劇を救う?」

虚無蔵「いかにも。」

ひなた「やっぱり遠慮します。 何か よう分からんけど 私の手に負えることやなさそうなんで…。 すいません。」

太秦映画村

ひなた「(心の声)『時代劇を救うなんて そんな大層な。 大体 時代劇が滅び去るて どういうこと? そんなわけない…。』 痛っ! たあ~。 何? えっ。 えっ えっ… 大丈夫ですか? えっ えっ ちょっと… しっかりしてください。 えっ 誰か。 誰か 救急車!」

「はあ… また お前か。」

ひなた「な… 何で こんなとこで寝たはるんですか。」

「どこで寝ようと 俺の勝手だ。 邪魔しやがって。」

ひなた「邪魔て…。」

「大体 何で お前が ここにいるんだ。」

ひなた「えっ?」

「条映城のお姫様になり損なったお前が。」

ひなた「(心の声)『その『お前』いうの やめえ 『お前』いうの。』」

「お前… ウケると思ったのか? コンテストの時だ。 ああいう目立ち方をすれば 勝てると思ったのか?」

ひなた「違います。」

「冒とくだ。」

ひなた「冒とく?」

「侍にも 時代劇にも。 愛も敬意もない所業だ。」

ひなた「そ… そういう あんたは 何なん?」

「何が?」

ひなた「はかま つけて こないなとこで寝てるやなんて そっちの方が 時代劇への冒とくやないの? どうせ 大部屋なんでしょ! (心の声)『あっ 反応した。 これが こいつの弱点か。 よっしゃ。 有象無象の一人なんでしょ?』」

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