連続テレビ小説「なつぞら」第103話「なつよ、どうするプロポーズ」【第18週】

(拍手と歓声)

神地「しかし あそこまで言われちゃうと かえって すがすがしいよな。」

なつ「間違ったことは 言ってないように思うけど…。」

神地「間違ってないから やっかいなんだ。 金にならない芸術はつくるな 勘違いはするなって 露骨に言われたわけだからさ。」

なつ「芸術をつくってるつもりはないでしょ 別に。」

坂場「しかし 作り手の理念と 経営者の理念を 一緒にされては困りますよ。 芸術的な野心がなかったら 我々の仕事は向上していきませんから。」

下山「まあ まあ まあ まあ… 正月から そんな難しい話やめようよ。」

茜「そうですよ。 私は いかにも経営者らしいスピーチだと 思っただけだわ。」

神地「さすが 茜ちゃん。」

堀内「お前 そのさすがって バカにしてるだろ。」

神地「そんなことないですよ。」

茜「そんなことないわよ。 ね。」

神地「ね。」

堀内「えっ…!」

なつ「日本の漫画映画は あのディズニーに対抗した あの人のそろばんから はじき出されたものと言えるんですよね。 そのそろばんがなかったら 私も ここにいないわけですね。」

仲「なっちゃん。」

なつ「はい。 あ…!」

仲「こちらが 猿渡君と一緒に テレビ漫画『百獣の王子サム』の原画を 担当している奥原なつです。」

大杉「奥原なつさんか。 どうも ご苦労さん。 好調だね テレビは。」

なつ「はい ありがとうございます。」

大杉「10年前 私は アメリカを視察して いずれは 日本も テレビの時代が来ると読んでいた。 その時こそ このスタジオが 生きると思って造ったんだ。 その時が ついに来たのだよ アータ。」

なつ「はい。」

大杉「映画をつくる人間には まだ テレビを 電気紙芝居などと言って 見下している者もいるがね 必ず そんなことは言ってられなくなる。 それに先駆けて テレビ漫画こそ その電気紙芝居のパイオニアになるものだ。 漫画と紙芝居だけにね。 違う?」

井戸原「はい おっしゃるとおりだと思います。」

なつ「私も そう思います。」

大杉「うん。 頑張ってくれたまえ。」

仲「彼が 一緒に演出をしている 坂場一久君です。」

大杉「ああ サカバ君か アータもご苦労さん。」

坂場「あっ… ありがとうございます。」

大杉「ハハハ… じゃ 奥原なつさん。 奥原なつ…? 奥原なつ… あっ。」

なつ「えっ!」

大杉「アータのお兄さん 元気かね?」

なつ「あ… 思い出して頂けましたか…?」

大杉「アータを 面接で落とさなくてよかったよ。 ハハハハハハ…。」

(笑い声)

なつ「落としたことは忘れてるんだ…。」

喫茶店・リボン

坂場「終わったな もう これで。」

なつ「何がですか?」

坂場「僕も君も もう映画には戻れないということだ。」

桃代「そうなの?」

なつ「そんなこと まだ分からないでしょ。」

坂場「それを わざわざ知らせるために 仲さんと井戸原さんは 僕たちを大杉社長に紹介したんですよ。」

下山「いや… そりゃ考え過ぎだって イッキュウさん。」

坂場「僕が 仲さんに嫌われていることは 確かでしょう。」

下山「まあ 仮に そうだとしてもだ…。」

茜「イッキュウさんはともかくとして どうして なっちゃんまで? 映画じゃなくて テレビに追いやったってことでしょ? 仲さんが そんなことするかしら。 なっちゃんの才能を 誰よりも買ってるのは仲さんなのに。」

なつ「そんな才能なんてないんですけど 仲さんが そんなことするとは思えません。 だって 茜さんだって一緒だし。」

坂場「茜さんは いずれは 戻れることもあるでしょう。」

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