連続テレビ小説「なつぞら」第37話「なつよ、今が決断のとき」【第7週】

阿川家

なつ「これは どうするんですか?」

弥市郎「もちろん 売るんだ。」

なつ「ここに 買いに来る人がいるんですか?」

弥市郎「ここに来るのは 本物の熊か… 雪女ぐらいだべ。」

なつ「私が 雪女ですか?」

弥市郎「雪女というよりは… 雪ん子だべ。」

なつ「子どもで すいません。」

弥市郎「しっかりした子どもな。」

なつ「ハハハ…。」

砂良「帯広の土産物屋に持っていくんだわ。」

なつ「お土産か…。」

砂良「土産は 生活のためだけど そうじゃないのも作ってるわ。」

なつ「弥市郎さんは 芸術家なんですね。」

弥市郎「昔は 東京で 教師をしてたんだ。」

なつ「学校の先生だったんですか?」

弥市郎「終戦後に こっちに来て 開拓はせずに森に入って こんな生活を始めた。」

なつ「先生は 辞めたんですか?」

弥市郎「さんざん 子どもたちに 軍国主義を たたき込んできたからな。 続ける気にはなれんかった…。」

砂良「魚 焼けたよ。 食べない? 今日は 湖に これを取りに行って その帰りに あんたを見つけたのよ。」

なつ「もしかして その魚は オショロコマですか? 倉田先生の芝居に出てきた!」

砂良「そ。 オショロコマ。」

なつ「それじゃ あなたが… 砂良さんが 白蛇の化身だったんですね!」

砂良「は?」

なつ「きっと 倉田先生は あなたを モデルにしたんです。 白蛇の化身を。 だから 助けてくれたんですね。」

砂良「何でもいいから 食べれば?」

なつ「ありがとうございます。 んっ 本当においしい! オショロコマ。」

弥市郎「砂良の母親も 空襲で死んだんだ。」

なつ「えっ?」

弥市郎「俺たちも あんたと同じだ。 空襲で 大事な人を失って 北海道に来た。 空襲で 大事な人を失って 北海道に来た。 だから 倉田先生は あんたの芝居を 俺たちに見せたかったんじゃねえのかな。」

なつ「おじさんは 戦争を恨んでますか?」

弥市郎「もちろん 今は恨んでる。 この子の母親を思い出す度 怒りが込み上げてくる。 助けてやれんかった 自分に対する怒りもな。」

なつ「どしたらいいんですか? そういう怒りや悲しみは どしたら 消えるんですか?」

弥市郎「自分の魂と向き合うしかないべな。」

なつ「魂…?」

弥市郎「消さずに それを込めるんだ。」

なつ「魂を込める?」

弥市郎「そういう怒りや悲しみから 新たな絶望を生まないために 俺は こうやって この木の中に閉じ込めてる。 それを 自分の魂に変えるのさ。 倉田先生だって きっとそうだ。 平和を祈って 魂込めて ああいう芝居を作ったんだ。」

なつ「はい…。 これは 何ですか?」

弥市郎「分からん。 木の魂… 木魂(こだま)としか 言いようがねえべな。 ハハハ。」

なつ「コダマか…。」

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