道中
暢子「どうして すぐカッとなるのかね。 自分でも よくない 直した方がいいと分かってるのに…。 どうしたら直ると思う?」
優子「お母ちゃんも そうだったさぁ。」
暢子「えっ?」
優子「若い時は すぐカッとなって 暢子と同じ。」
暢子「まさかやー。 ありえん。 信じられない。」
優子「暢子は 何に 一番腹が立ったの?」
暢子「女のくせにてって言われて…。 今日ね 初めて男子に かけっこで負けた。 負けたことは そんなに悲しくない。」
暢子「でも 今までは 勝ったら『女のくせ』って言われて これからは『やっぱり 女だから』って 言われると思うと すごく悔しい。 うちは この村も 沖縄も 自分が女だということも 全部 大嫌い!」
暢子「本当はね 自分で 自分に もやもやーしてるからかもしれない。 本当は 何か 心を燃やせるような 打ち込める 一生懸命になれるものを 見つけたいって ずっと思ってる。」
暢子「でも… それが何かが 全然分からない。 みんな 自分のやりたいことが分かってる。 でも うちだけ何もない。 何もできない。」
優子「泣いていいよ。 もっと いっぱい泣きなさい。 暢子は 暢子のままで上等。 大嫌いな自分も 大事な自分だからね。 いつか きっと この村に生まれてよかったって 女に生まれてよかったって 思える日が 来ると思うよ。」
暢子「お母ちゃん ありがとう。」
比嘉家
良子「ただいま。」
歌子「ただいま。」
智「お邪魔します。 賢秀!」
良子「帰ってきたの!?」
歌子「お帰り!」
良子「あっ お金 どうしたわけ?」
賢秀「博打で勝った!」
智「であるわけね。 賢秀は 博打の才能もあるからな。」
賢秀「あ~! 腹減った! 暢子は?」
良子「暢子 就職の話 断ったってよ。 さっき 売店で善一さんに聞いたさ。」
歌子「向こうじゃなくて 暢ネーネーんの方から 働きたくないって言ったって。」
賢秀「よし! 暢子 よくやった!」
歌子「それとね 暢ネーネー かけっこで 陸上部のキャプテンに負けたわけ。」
智「えっ?」
賢秀「なら 相当落ち込んでるなあ。」
智「暢子たちが帰ってきたら パーッとやるかか!」
賢秀「上等!」
智「フフフッ…。」
歌子「でも 多分 芋しかないよ。」
賢秀「売店で 何か買ってくるか。 あの金で。」