横浜・鶴見
暢子「あまゆ…? 沖縄の言葉?」
三郎「そう 甘い世の中 苦しいことのない世界。 この2階だ。 行こう。」
沖縄料理店・あまゆ
暢子「アイヤー! まるで沖縄に帰ったみたい!」
三郎「お~い 順次!」
順次「あっ 三郎さん。 お待ちしてました!」
トミ「あ~ この子ですか?」
暢子「初めまして。 比嘉暢子です。」
順次「すごいね。 いきなり県人会長に 保証人になってもらって。 よろしくね。」
暢子「よろしくお願いします。」
三郎「この店と 上の下宿のあるじ 金城順二。」
三郎「こっちが 娘のトミ。」
順次「娘と言っても出戻りだけどな。」
トミ「いいから そんなこと言わなくて!」
順次「ハハッ とにかく 部屋見てきたら?」
トミ「行こう こっち。」
暢子「はい!」
2階
トミ「こっち。」
トミ「布団 古いけど よかったら使って。 レストランで働くの?」
暢子「はい。 明日は休みで あさってからと言われました。」
トミ「そう。 驚いたでしょ あんまり狭くて汚いから。」
暢子「いいえ! 初めてです。 自分だけの部屋。」
沖縄料理店・あまゆ
三郎「あっ 来た来た来た。 おい みんな 今日から2階に下宿する 比嘉暢子ちゃん。 昨日 やんばるから出てきた新米だ。 よろしくな!」
平太「ゆーちゃんやー。」
栄吉「かわいいぐゎーだねぇー。」
伸吾「よろしくね。」
暢子「よろしくお願いします。」
トミ「暢子ちゃん 早速 手伝って。」
暢子「えっ? はい。 みんな ウチナーンチュ?」
順次「鶴見は リトル・オキナワさ。」
暢子「リトル・オキナワ?」
順次「ああ。 近くに京浜工業地帯があって 戦前から 鶴見 川崎 横浜に 日本中から たくさんの労働者が。 特に ウチナーンチュが多かったよ。」
暢子「うちのお父ちゃんも 毎年 那覇に 出稼ぎに行ってましたよ。」
順次「沖縄から 遠く離れて みんな不便なこと つらいこともあるけど 仕事のあとは 飲んでしゃべって ウチナーンチュ同志 助け合って暮らしてるわけ。」
暢子「その県人会の会長が 三郎さんなんですね。」
順次「うん。 三郎さんは 沖縄二世だけど ウチナーンチュの心を しっかり持ってる。」
トミ「お父ちゃん また手が止まってる。 フーチャンプルー 早くして。」
順次「アハハ… ごめんごめん。」
三郎「暢子ちゃん。」
暢子「はい。」
三郎「しっかり手伝えよ。 店 手伝う条件で 家賃 安くしてもらったんだからな。」
暢子「アイ そうなんですか?」
三郎「おう。」
トミ「聞いてなかった? これ お願い。
順次「はい。」
トミ「はい。」
三郎「おっ 来た来た来た。 お~ ありがとう。」
暢子「お待たせしました~。」
三郎「ああ そうやって働いてりゃ みんなに 顔覚えてもらえる。」
暢子「はい 頑張ります!」
栄吉「暢子ちゃん 家族は?」
暢子「お母ちゃんと ニーニーとネーネーと妹がいます。」
栄吉「はあ~。」
平太「俺も 4人きょうだいさ。」
暢子「おおっ!」
平太「みんな 読谷にいる。」
暢子「アイ。」
伸吾「俺は 石垣。 13人きょうだいの下から3番目さ。」
暢子「13人!?」