連続テレビ小説「ちむどんどん」94話「愛と旅立ちのモーウイ」

ホール

房子「うん。 一つだけ教えて。 どうして 沖縄料理なの? ずっと イタリアンを 修業してきたのに。」

暢子「いろんな人に それを聞かれて うまく言葉にできなくて 考えていたんです。 小学生の時に 和彦君が やんばるに来たんです。 父が まだ生きていた頃です。 父と作った沖縄のそばを 食べてもらいました。」

回想

暢子「ん~ 難しい~。」

暢子「ど~ん!」

暢子「おいしくない?」

和彦「今まで食べた そばの中で 一番おいしい!」

暢子「ねえ やった! お父ちゃん やった~! やった! やった! やった!」

回想終了

暢子「うちが料理をして 誰かに食べてもらいたいのは あの日のうれしさが 忘れられないから。 父と作った 家族と食べたおいしいものを 食べてもらいたいからなんです。」

暢子「うちにとって足元の泉は 家族と食べた ふるさとの料理です。 うちは ふるさとの味で たくさんの人を笑顔にしたい。 だから 沖縄料理のお店を やりたいんです。」

房子「大きな店で 高級な料理を作ることだけが 料理人の幸せとは限らない。 その人が 何をやりたいのかによりけり。 ただ 何をやりたいのか 分からないまま終わることが多い。 分かりました。」

暢子「オーナー 約束は 絶対に守ってくださいね。」

房子「約束?」

暢子「うちがお店を開いたら 三郎さんと多江さんと 泡盛で乾杯しに来てください。」

房子「始めるだけなら誰でもできる。 こうしましょう。 知らないお客様だけで お店が満席になったら 私は あなたの店に行く。」

暢子「分かりました! 約束ですよ。」

房子「この店から独立する人 みんなに 言っていることを言います。 どんなに苦しくても 資金援助はしない。 借金の保証人にもならない。 たとえ親戚だといっても そのルールは変わりません。」

暢子「分かっています。」

暢子「だけど ちょくちょくお店には 顔を出させてもらいますね。」

房子「来なくていい。 あなたは もう このフォンターナとは 関係なくなるし 私とも関係なくなる。」

暢子「関係は なくなりません!」

房子「いつか あなたは私のことを忘れるし 私も あなたのことを忘れる。」

暢子「うちは 絶対に オーナーのこと忘れません。 オーナー うちのこと 忘れるんですか?」

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