喫茶・サーカス
マスター「お待たせしました。」
和彦「それで 大事な話って?」
重子「どうしても… どうしても もう一度 考えてほしいの。 ちむどんどんのこと。」
和彦「はぁ…。 言ったよね? 口出ししないでくれって。 僕は すばらしい名前だと 思ってる。」
重子「でも… お願い。」
和彦「店の名前は ちむどんどん。 それは もう決まりなんだ。 絶対に 譲らない。」
重子「そんな…。 えっ? お店の名前?」
和彦「沖縄の言葉で『ちむ』は心 心がどんどん ワクワクする。 僕が 暢子に初めて会った時…。」
重子「いい! いい名前ねえ…。 すてき。 で 子供に名前は?」
和彦「それは まだたけど。」
重子「男子20名 女子20名分 考えたわ。 生まれてくる子供の名前。 あくまで あくまで候補として。」
和彦「何だ 大事な話って これのこと?」
重子「とても大事なことでしょ? 名前というのは 親が子にあげる 一番最初の贈り物。 父さんだって あなたの名前を決める時は 何日も図書館に通って 何十冊も本を借りて 悩んで悩んで決めたのよ。」
和彦「父さんが?」
重子「もちろん 私も一緒に。 いくつも候補を出し合って 最終的に 平和への祈りを込めて『和む』『和らぐ』という字を選んで『和彦』に決めた。」
和彦「ありがとう。」
そして 暢子は ちむどんどん開店に向け 信頼できる料理人を探し 和彦は フリーの記者として あちこちに 自分の企画を 売り込む日々が続きました。
営業先
和彦「せめて 企画書に目を通すだけでも…。」
「駄目駄目。 そんな地味な企画…。 こう パ~ッと明るいさ もっと ナウいっていうかさ。」
和彦「ナウい?」