そして
容子「失礼しました。」
柴田「大丈夫ですか?」
真理亜「また 飲みすぎ? 気持悪くなるまで 飲むなっていうの。」
恵理「真理亜さん 違うってば…。」
真理亜「何よ…。 もう いい年なんだからさ。」
恵理「だから…。」
柴田「大丈夫ですか?」
容子「飲みすぎじゃないもん。」
真理亜「え? じゃ 何?」
容子「私は…。 もう 私は…。 …似ている。」
柴田「…え?」
容子「似ている! あれは 中学1年の冬だった。 私は 子供の頃から 男みたいな髪型で 性格も 男みたいで 友達も 男のほうが多い。 そんな子だった。 でも そんな子にも 恋は 訪れる。」
容子「そう… 私も恋をした。 いつも 一緒に けんかしたりしていた 遠藤君に… 恋をした。 それまでは プロレスの技をかけても 平気だったのに 急に 恥ずかしくなったもんだった。 そして… バレンタインデーがやってきた。 私は 誰にも見られないように隣の町まで出かけていってチョコレートを買った。」
容子「そして 遠藤君に渡したのだ。 生まれて初めてのチョコ…。 恋の告白…。 だが しかし 遠藤君は 突然 笑いだし『アッハハハ…。 お前が『チョコ』? 冗談やめろよ。 男女のくせに バ~カ! ショックだった! でも 私は『バ~カ! 冗談に 決まってんだろ。 返せよ』と 奪い返し… あとで 自分で食べたのだった。 そんなバレンタインデーの日に 似ている。」
柴田「ええっ…。」
恵理「うん。 確かに似てるかも。」
真理亜「だから 何が?!」
容子「私は 酔っ払って 吐いたんじゃないんです。 ふだんの私のキャラからいって そう思われるのも 無理はないんですけど… 違うんです。」
柴田「じゃ 何なんですか?」
容子「私は… 私は… 妊娠しているんです!」
一同「ええ~っ!」
容子「という訳でした。 うわ~ 死にたいほど 恥ずかしい…。」
柴田「容… 容子さん。」
容子「はい。」
柴田「…本当なんですか? でかしましたね。」
容子「…柴田君。」
柴田「ヒ~… 容子さん。」
容子「柴田君。」
柴田「似ている! あれは 高校3年の冬…。 いや そんな事は どうでもいい! アッハハハ…。 やった~!」
(拍手)
柴田「やった~。 やりました。 どうも ありがとうございます。 昇進したことなんかより 全然 うれしいです!」
容子「え? 柴田君 昇進したの?」
柴田「はい。」
容子「すばらしいじゃない! これから お金かかるからね。」
柴田「でも 昇進したので 残業手当がつかなくて…。」
容子「断りなさい。」
柴田「そんなぁ…。」
みづえ「すばらしいわ。 ねえ 今日は お祝いね。」
真理亜「はあ~ また 1人 増えるのか…。」
遥「あ… でも 部屋割りは 変わらないですよね。 よかった…。」
真理亜「ん? ちょっと そこの2人。 今 目と目で『うちも そろそろ』とか 会話したね。」
祥子「え?」
恵達「してないです。 何 言ってるんですか。」
遥「あ 図星の顔だ。 さすが 真理亜先輩。」
真理亜「あ~ぁ もう… このアパートは どうなっちゃうのよ。」
文也「恵理! どうしたの? …おい!」
容子「恵理ちゃん?」
恵理「あ… ごめんなさい。 なんか うれしくて…。 容子さん。 私 うれしいさぁ…。」
容子「恵理ちゃん。」
恵理「ごめんなさい。 こんな時に 言う事じゃないかも しれないんですけど…。」
容子「いいよ。」
恵理「はい。 消えていってしまう 命もあるけど また 生まれてくるんだなって…。 それが… はい。」
みづえ「そうねぇ…。 大切にしないとね 容子さん。 柴田君…。」
2人「はい。」
(拍手)
恵理「おめでとう!」
柴田「ありがとうございます。 どうも…。」