連続テレビ小説「あまちゃん」9回「おら、東京さ帰りたくねぇ」

天野家

夏「要するに もともと 夫婦仲うまくいってねえとこに 大吉が『夏ばっぱ 倒れたど』って 嘘のメールさ送ったっつう訳だ。 ほんで これ幸いと マンション飛び出し そのままっつう訳だ。」

黒川「『寝耳に水』っていうか 僕は うまくいってると…。」

春子「嘘でしょう?」

黒川「もちろん 小さな衝突はあります。 どこの家庭も そうだよ。」

夏「よその家庭は どうでもいいべ。 おめえら 夫婦の話しろ。」

黒川「とりあえず…。 出てった理由 教えてくれないかな?」

春子「理由なんか ない。 逆に 一緒に暮らす意味が 見当たらない。」

黒川「随分な言われようだな…。」

夏「すいませんね。 うちは 普通の家庭じゃないもんで。 春子の父ちゃんは 遠洋の漁師ですから 一年のうち 340日は 母子家庭だったんです。」

黒川「ええ 聞いてますが。 だから 僕は 仕事より家族を優先して…。」

春子「それだ 理由…。」

黒川「え?」

春子「そりゃさ みんなで一緒に 暮らした方がいいに決まってるよ。 そんなの分かってるよ。 でも 今のアキにとって 果たして それが いい事なのかなって思ったの。」

漁協

かつ枝「美寿々なんか 駆け落ちしたんだよ!」

アキ「じぇじぇじぇ!」

美寿々「や~め~で~!」

長内「しかも 1回や 2回じゃねえど。」

かつ枝「最後はな 年下の彼氏ど 船さ乗って 韓国まで逃げだんだよな!」

美寿々「チェジュ島でなあ  海女やってたのを… あった! 見で! 若がった~!」

アキ「かっけえ~。 美寿々さん これ かっけえ~!」

天野家

春子「私たちさ 知らず知らず アキを追い込んでたのよ。 いい子に育ってほしいっていう 願望が強すぎて。 まあ それはね 私が あんまり いい子じゃなかったから って事なんだけど…。」

夏「悪い子だったんですよ。」

春子「黙っててって! 黙ってて。 じゃあさ 大体 いい子って何よ? 親に迷惑かけない子? 携帯電話に ロック掛けない子? テレビの電源消す時は 主電源まで切る子? いい子って何よ? 何なの!?」

黒川「え~っと…。」

大吉「えっ いや おら 独りもんだから分がんねえ。」

漁協

かつ枝「なっ 分がったが? みんな いろいろあんのよ。 いろいろあって 今日があんのよ。」

美寿々「アキちゃんのお母さんが 特別な訳でねえの。 みんな いろいろあって 最終的に ここさ帰ってくるの。 お互い分かってっから 黙って受け入れるの。」

アキ「うん…。」

天野家

アキ「ただいま!」

夏「お帰り。」

アキ「パパは?」

夏「大吉っつぁんが送ってった。」

アキ「ママ…。」

夏「ほら ちゃんと娘さ説明しろ。」

春子「…分かってるよ。 ちょっと待っててね。」

アキ「いいよ ママ。 分かるから 何となく。 いろいろあるよね。 おやすみ。」

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