古山家
玄関
(戸の開閉音)
裕一「ただいま。」
音「お帰りなさい。」
華「ただいま。」
華の部屋
音「華の気持ち ちゃんと 考えられなくて ごめんなさい。 駄目ね…。」
華「私も… 言い過ぎたし。」
音「あのね 華…。 お母さんが歌を中断したのは 華のせいじゃない。 お母さんが 華を選んだの。 華に会いたかったの。」
廊下
裕一「ちゃんと話せた?」
音「伝わったかは分からないけど。」
裕一「そっか… うん。 ゆっくりいこう。」
音「うん。」
それから数日後 最終選考の連絡が来ました。
音「はい… 分かりました。 ありがとうございました。 はい… 失礼します。」
裕一「えっ… ど… どうだった?(倒れる音)ちょちょ… 音? 音? えっ えっ?」
音「どうしよう…。」
裕一「えっ えっ えっ?」
華「ただいま。」
音「受かってしまった!」
裕一「えっ!? えっ えっ?」
裕一「受かった!? 受かった!? 本当に!?」
音「信じられない… 本当に私でいいのかしら?」
裕一「いいんだ いいんだ いいんだよ いいんだよ いいんだよ! えっ… おめでとう! おめでとう! 本当におめでとう!」
音「うん… 頑張る。 絶対に いい舞台にする。」
裕一「できる… 絶対できる…。 おっ 華 お帰り! お母さん 受かったよ!」
音「華! これから 忙しくなると思うけど… お手伝い 頼んでもいいかしら?」
華「お弁当は自分で作るよ。」
音「ありがとう。」
華「おめでとう。」
そして いよいよ オペラ『ラ・ボエーム』の 顔合わせの日が やって来ました。
駒込「古山さん お待ちしていました。 皆さん 主役のミミを演じる 古山 音さんです。」
音「古山 音です。 よろしくお願いします。」
(拍手)
駒込「演出の駒込です。 よろしく。」
音「よろしくお願いします。」
駒込「お席は あちらです。」
音「はい。」
伊藤「古山さん 伊藤と申します。 よろしくお願いします。」
音「ロドルフォの…。 古山です。 よろしくお願いします。」
伊藤「いい舞台にしましょうね。」
音「はい。」
駒込「さて 皆さま おそろいになられましたので 顔合わせを始めたいと思います。 …が 最初に 私から ご挨拶を申し上げます。」
駒込「『ラ・ボエーム』は 青春群像劇です。 芸術家志望の貧しい若者4人に 2人の女性が関わることで 彼らが大人になっていくさまを 描いていきます。…」
駒込「どうぞ よろしくお願いいたします。」
(拍手)