布美枝「こうやって片づけると そげに悪くないね?」
藍子「うん。」
布美枝「ほら こげした おしゃれになる。」
藍子「森のレストランみたい。」
布美枝「そげだね。」
藍子「ねえ お母ちゃん…。」
布美枝「ん? 何?」
藍子「お父ちゃん 今晩 泊まるの?」
布美枝「1人で帰れんわ。 車がないと。」
藍子「締め切り 大丈夫なのかな。 後で 困るんじゃないかなあ。」
布美枝「大丈夫。 お父ちゃんも 休みがほしかったんだわ。 藍子達と 一緒に ここに来たかったんだって。」
藍子「無理してない?」
布美枝「してるかもしれんね。 けど 無理してでも お父ちゃんも お母ちゃんも みんなで ここに来たかったんだわ。」
藍子「ふ~ん。」
(小鳥の鳴き声)
布美枝「あら 鳥が そこまで来とる。」
藍子「え どこどこ?」
布美枝「し~っ。 あそこ あそこ。」
(小鳥の鳴き声)
布美枝「ええっ 電気が来てない!」
茂「しばらく使っとらんので 止めとるようだなあ。」
布美枝「夜は どげなるんです?」
茂「山の夜だけん 真っ暗だ。」
2人「え~っ!」
茂「心配いらん。 奥の部屋に… ほれ。」
布美枝「ロウソクですか…。」
茂「今夜は ロウソクの明かりで晩飯だ。 昔のヨーロッパの貴族と一緒だぞ。」
2人「貴族だ~! 貴族 貴族 貴族 貴族 貴族 貴族 貴族 貴族! 貴族! 貴族!」
茂「いただきます。」
3人「いただきます。」
藍子「昔の貴族って こんな暗い中で ご飯食べてたの?」
茂「ああ そげだぞ。」
布美枝「暗い方が ムードあって ええわよ。」
茂「ええ事 言うなあ。 ムード 満点だ!」
藍子「でも 暗いと 新聞読めないね。」
茂「ん?」
藍子「今日は 読まなくてもいいの?」
茂「ほんとはな あげなもん 読まなくてもええんだ。 生きるのに必要な事は ちゃ~ん 自然が教えてくれるけん。 虫も 動物も 新聞は 読まんもんな。」
喜子「虫は 読まないね。」
茂「うん。 うちには『妖怪 いそがし』が 取りついとって お父ちゃん 新聞を読まされて いたのかもしれんなあ。」
布美枝「『妖怪 いそがし』…?!」
藍子「妖怪じゃなくて 雑誌社の人でしょう? 『妖怪 いそがし』なんて いないもん。」
茂「藍子は なして そげ思うんだ?」