連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第70話「連合艦隊再建」

はるこ「浦木さんとの打ち合わせの前に 少し時間が空いたから パチンコ屋さんに入ったら これが 大当たり! 元手100円で 大収穫です。」

布美枝「100円で こんなに?」

茂「あんた 名人だなあ。」

はるこ「店に持って帰ったら それこそ 景品ちょろまかしたのかって 疑われそうだし 先生の所に お持ちしようと思って。」

布美枝「ええんですか? こんなに。」

はるこ「元が100円ですから。」

布美枝「近頃 100円づいとるわ…。」

はるこ「え?」

布美枝「あ いえ ありがとうございます。」

茂「ほんなら 遠慮なく。」

はるこ「私も お邪魔したかったんです。 藍子ちゃんの顔見て 元気をもらおうかなあ なんて。」

布美枝「何か ありました?」

はるこ「ちょっと 落ち込んでます。 売り込み… ずっと黒星続きなんです。」

茂「うん…。」

はるこ『何度行っても 何回 描き直しても ダメなんです。 何だか 人間扱い されてないような気がして…。』

浦木「ほら ごらんなさい。 『あんな写真 お守りにしるな』って 言ったじゃないですか?」

茂「写真?」

布美枝「お守り?」

はるこ「あ 何でもないんです! 余計な事を!」

浦木「俺 その目に弱いのよ。」

茂「確かに 貸本から 雑誌に採用される人は 数えるほどしか おらんですからなあ。」

はるこ「やっぱり 私には 無理なのかな…。」

茂「しかし こういう時こそが 漫画家魂のみせどころですよ。」

はるこ「え?」

茂「注文がなくとも 相手にされなくとも 描き続けねばならん。 描く事を やめたら 漫画家は おしまいです。」

はるこ「漫画家魂か…。」

浦木「心配いりませんよ。 あなたは まだ若いんですから。 少女漫画だって まだまだ これからの分野です! 成功するチャンスは 幾らでも ありますよ。」

茂「うん お前 たまには まっとうな事 言うな。」

浦木「だろう?」

(藍子の泣き声)

布美枝「目 覚ました。 あ ちょっと 2階で おしめ替えてきます。」

はるこ「じゃあ 私も一緒に。」

布美枝「はい。 はい 一緒にね。」

(藍子の泣き声)

布美枝「ハイハイハイハイ! よいしょ。」

浦木「はるこさんは 俺がいるから いざとなったらね 大丈夫だとしてだ。 ゲゲ。 お前 どげすんだ?」

茂「え?」

浦木「将来について 真剣に 悩まなきゃならんのは お前の方だぞ。 40過ぎてから売れだした 漫画家なんぞ 俺は見た事がない。 今までやって… 芽が出なかったんだ。 この先も 日の当たる見込みは ないだろうよ。」

茂「嫌な事 言うな。」

浦木「長年の友として お前の身を案ずればこそ 言いにくい事も言ってんだせ? どう あがいても 貸本漫画は もうダメだ。 紙芝居が壊滅した時の事 忘れた訳では あるまい。 新機軸でも考案せん事には この先 生きていけんぞ。」

茂「何だ 新機軸って?」

浦木「俺に 1つ アイデアがある。 教えてやろうか?」

茂「もったいぶらんと 早こと言え。」

浦木「しかたねえなあ。 特別大サービスだ! ただで教えてやる。 …が もうかったら そのかわり こっちにも還元しろよ!」

茂「まずは 話を聞いてからだ。」

浦木「おう。 昔 面倒見てやった漫画家の中に 業界新聞で 漫画を描いとる奴がおる。 これが 大成功らしい。」

茂「業界新聞?」

浦木「鉄鋼新聞 繊維新聞 建築新聞 パチンコ新聞。 そういう専門の新聞の中に ちょっとした漫画が載っとるだろ。」

茂「ああ。」

浦木「1つ描くと 同じものが 10紙にも 20紙にも 載るらしい。」

茂「ふ~ん。」

浦木「紹介してやるから 一度 会って 話を聞いてこい。」

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