連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第75話「初めての里帰り」

一同「えっ!」

源兵衛「貴司に所帯持たせて その店 任そうと思っとるんだ。 飯田家の跡継ぎは もちろん 長男の哲也だが 学校の先生と 酒屋は 両方は やれんだろう?」

哲也「ああ。」

源兵衛「わしも 近頃は 市議会の仕事が忙しいけん これを機会に 酒屋の仕事を貴司に譲って ここと 今度 出す店と 両方やらせたらええ思っとる。」

ミヤコ「店を出すって… お父さん そげな事 いつの間に…。」

源兵衛「酒屋 開くのに ちょうどええ出物 見つけたんだ。 場所も ええし 値段も 手頃だけん 早々に 手付けだけでも 打ってくるわ。 哲也 お前 それでええか?」

哲也「ああ。 俺は ええよ。 お前は ええのか?」

源兵衛「ええに決まっとるわ。 これは 貴司のために 考えた事だ。 なあ?」

貴司「ああ…。」

輝子「ほんなら 見合いの話 早こと 進めんといけんですね?」

源兵衛「酒屋2軒の切り盛りだけんな。 嫁の手も借りんと どげだいならんわ。」

貴司「あのな…。」

輝子「早速先方さんに連絡せんと。」

いずみ「ほんとに ええの? 貴司兄ちゃん さっきから ひとっ言も言っとらんけど。」

貴司「おい… いずみ!」

いずみ「何も言わんで こんまま 話が進まんでも ええの?」

源兵衛「こら いずみ 子供が 口を出すな。」

貴司「おやじ 俺…。」

源兵衛「貴司の気持ちは わしが よう分かっとう。 長いこと一緒に 酒屋の仕事を やっと~だけんな。」

(源兵衛と輝子の笑い声)

2階

布美枝「変わっとらんなあ。 この部屋も… 昔のまんまだ。 ギシギシしちょ~ ミシン油 あったかいな?」

貴司「お前 みんながおるとこで 余計な事 言うなよ。」

いずみ「見合いの話 進んでもええの? お兄ちゃん 酒屋 継ぐ気なの? 意気地なしねぇ。 お父さんの言いなりになって。」

貴司「俺だって いろいろ 考えとる。 おやじも 家の事 思って やっと~だけん 俺だけ 好き勝手する訳にいかん。」

いずみ「ほんなら 満智子さんの事は どげする気?」

布美枝「いずみ?」

いずみ「…何?」

布美枝「ミシン油 持っとるかいね?」

貴司「えっ ミシン…。」

いずみ「私は 持っとらん。」

布美枝「そう。 …何かあったの?」

貴司「俺 店 片づけんと。」

いずみ「手伝うわ。」

布美枝「何だろう?」

居間

源兵衛「酒屋の物件 手付け打つなら 大安の日がええな。 貴司と 飯田坂店の 将来が かかっちょ~けん。」

ミヤコ「もう 決めるんですか?」

源兵衛「ん? いつまでも 次男坊の冷や飯食い には しておけんだろう。 いずれは 分家して 酒屋をやらそうと わしは 前から そう思っとったんだ。 家のために よう働いてごいたけん 親として 店の一軒ぐらいは 持たせてやらんとな。」

ミヤコ「でも 見合いの話 あまり 乗り気には見えんでしたけど…。」

源兵衛「え~っと 今月のうちで大安は あ ここか。 お~ ここにもあるな。」

洋食・トカミ

チヨ子「藍子ちゃん 連れてきたら よかったのに。」

布美枝「お父さんが 『藍子は 置いていき』 言って 離さんのよ。」

チヨ子「どこも 孫は かわいいのねえ。」

布美枝「初めて連れてきたけん もの珍しいんだわ。」

チヨ子「一人で置いてきても 泣かんの?」

布美枝「うん 平気。 初めて来た家なのに ど~んと落ち着いとる。 うちの人に似たのか ええ度胸しと~わ。」

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