医務室
木之元「先生 どうですか?」
糸子「どうですか?」
「まあ すぐに 命が どうこうちゅう事は ない。 せやけど やけど自体は かなり ひどい。 首から腹 背中まで 広う やっとるさかいな。 1か月は 絶対安静や。」
糸子「ちゃんと 治りますか?」
「今は まだ何とも言われへん。 とにかく 安静と養生や。」
糸子「はい。 しっかり 看病しますよって 先生 どうか 治しちゃって下さい。 お願いします!」
3人「お願いします!」
「うん… うん。」
糸子「先生…。」
「ん?」
糸子「もう一個 聞いてええですか?」
「何や?」
糸子「妊婦が 火事 見たら おなかの子に あざが できる ちゅうんは ほんまですか?」
「迷信や。」
糸子「うち 火事 見るだけやのうて それ 飛び越えて 火消しまで してしもたんです。」
「医学的に ありえんこっちゃ。」
美代「けど 先生 昔から よう そない言います。」
「せやから 迷信や 言うてるやないか。 余計な心配 させちゃったら あかん! あんたは その体で よう お父ちゃん 助けた。 しょうもない事 気にせんと 元気な子ぉ 産み。 うん?」
小原家
2階 座敷
木之元「わしの腰 わしの腰! 腰 うん ええか ええか?」
2階 寝室
(千代の泣き声)
<勝さんが出征して1か月半 また えらい事が 起こってしまいました>
オハラ洋装店
<せやけど いよいよ うちには しょげてる暇も のうて とにかく はよ 家を直さんならん>
糸子「今と庭の間のガラス戸 あれをな 一日もはよ 直してほしいねん。 寒うて いてられへんさかい。 うん。 見に来てくれる? ほな 待ってますよって。 おおきに。 それから 畳や 畳…。」
居間
糸子「おおきに。」
「うん。」
糸子「ほんま 助かったわ。」
「いや ええねん。」
糸子「うち 年寄り いるしな。 これから 赤ん坊も 産まれるちゅうのに どないしようか 思ちゃったんや。」
「へえ…。」
糸子「あ… ああ…。」
「ん?」
糸子「痛い…。」
「何や?」
糸子「あ~!」
「何や ど どないしたんや?」
糸子「ああ! 陣痛 来てんやし。」
「陣痛?!」
糸子「あ~あ!」
「産婆さん 呼びに行かな あかんやないかな!」
糸子「いや まだ10分置きやって…。」
「大丈夫けえ?!」
糸子「ああ 3人目やよって… 大体 分かんねん。 ああ… いや ほんでも そろそろ 2階 片しとこか。 ああ… ああ! ああ…!」
「大丈夫か?」
糸子「うん。」
「おいおいおい… よいしょ! よいしょ!」