小原家
台所
<よっしゃ! よっしゃ よっしゃ!>
糸子「ああ。 こんで しばらくは どないかなる。」
オハラ洋装店
(ミシンの音)
(警戒警報)
糸子「警報や!」
<警戒警報は 日増しに増えてきました>
糸子「急ぎ! はよ! はよ!」
(警戒警報)
<6月に入ってからは 朝 昼 晩 ひっきりなしに鳴って>
2階 寝室
(警戒警報)
<夜は ロクに寝られんと。 そやからちゅうて 昼も 休んでる訳にいかん。 ゆうてるうちに 梅雨に入ってしもて>
山中町
(雨の音)
(水滴の音)
千代「あれ まあ。」
優子「お母ちゃん!」
千代「ぬれてしもて。 まあ~!」
糸子「ぬれるで。」
千代「ご苦労やったなあ。」
糸子「お母ちゃん 米 米 乾かして! ぬれてしもたかもしれん。」
千代「はいはい。 ぬれてしもたなあ。」
糸子「お母ちゃん。」
千代「はあ?」
糸子「その手 どないした?」
千代「はあ これか? ムカデに 刺されてしもたんや。」
糸子「ムカデ? うわ~ やっぱし 出てきてもうたか。」
直子「直ちゃんも ムカデ 見たで。 こんくらいのん。」
糸子「ああ あんたら ムカデ 絶対 触ったら あかんで!」
2人「うん。」
ハル「糸子!」
糸子「ん?」
ハル「早う 家 帰してくれなんだら うちら ムカデに殺されてまうで。」
糸子「はいはい。 戦争 終わったら すぐ帰しちゃるよって。」
ハル「戦争なんか終わるの 待っちゃあったら うちらの方が 先 死んでまうわ。」
千代「なあ もうちょっとしたら そこの川に ようさん 蛍が出るんやて。 昨日もなあ 日暮れに優ちゃんらと 見に行ってみたんやけど まだ出てへんかった。」
糸子「はあ。」
千代「楽しみやなあ。」
道中
(かえるの鳴き声)
(足音)
住民「こら 泥棒! 待てえ! あ 泥棒 見んかったか?」
「あっちや。」
住民「畜生 ほんまにもう!」
「おい 行ったど。」
(かえるの鳴き声)
「何じゃ お前。 ごっつい別嬪やの。 腹 減ってんけ? 食わしちゃら。 来いや。」
<モノが考えられへんように なってました>