居間
北村「うんま! これ 何よ このいわし! おかあちゃん また一段と 腕 上げちゃあんな。」
聡子「ほめられたで。 よかったなあ おばあちゃん。」
千代「ほんな事ない。 今日は いわしが よかっただけやん。」
北村「また そんな事 言うて。」
千代「ほんまですてえ。 ひいばあちゃんはな もっともっと 上手やったんやで いわし 炊くの。 なあ?」
糸子「う~ん。 いわしば~っかし よう炊いちゃったなあ。」
昌子「覚えてるか? ひいばあちゃん。」
聡子「覚えてへん。」
直子「うちは 寝てる顔だけ 覚えてる。」
優子「うちは 起きてる顔も 覚えてるわ。 怖かったでえ。 時々 優しかったけどな。」
千代「ええ おばあちゃん やったんやでえ…。」
糸子「文句ば~っかし 言うてたけどな。」
<戦争が終わって あっちゅう間に 10年がたちました>
玄関前
千代「気ぃ付けて~ 急に寒なったよってな。」
北村「おおきにやで ほんま。」
千代「いいえ。」
北村「おおきに おおきに。 ほんま おおきにやで! おかあちゃん ごちそうさん!」
優子「気ぃ付けてな。」
聡子「気ぃ付けて。」
北村「はいよ~! 歯ぁ 磨けよ ちゃんと。」
優子「分かってるわ。 大丈夫かいな?」
北村「大丈夫や。」
直子「ハハッ…。」
<昭和29年 内は41歳になりました>
オハラ洋装店
千代「ほんま 寒なったなあ。 はれ。 あんた また 仕事すんのかいな?」
糸子「うん。」
千代「あれ まあまあ。」
糸子「あんたら 早いとこ お風呂屋さん 行っちょいでや。」
優子 直子 聡子「は~い。」
糸子「よっ! あ~ よっしゃ。」
(糸子の鼻歌)
<さあ これからです>