俳優会館
休憩所
<いよいよ ハリウッド映画 『サムライ・ベースボール』の 出演オーディション 参加募集が始まりました。 関西地方のオーディションは 条映で行われることが決まっています>
ひなた「虚無蔵さん。」
虚無蔵「身の上書きか。」
ひなた「はい。 エントリーシートです。 大部屋のみんなが 次々に持ってきはるんです。 あっ 英語で出さんとあかんから 手伝うて 言われて。」
虚無蔵「おひな。」
ひなた「はい。」
虚無蔵「近頃のそなたの八面六臂の活躍ぶり 見事なものじゃ。 あの夏 そなたをここへ誘うたこと我ながら慧眼と自賛しておる次第。」
ひなた「虚無蔵さん…。 あっ 虚無蔵さんも はよ持ってきてくださいね。 エントリーシートです。 オーディション受けはるんでしょ?」
虚無蔵「フッ 戯れを。 御前芸比べには懲りたわ。」
ひなた「えっ?」
虚無蔵「拙者は 西洋の映画になど関心なし。」
ひなた「いや そないなこと言わんと 受けてください。」
虚無蔵「老兵は消え去るのみ。」
ひなた「いや それ時代劇っぽいけど 西洋のやつやし。」
虚無蔵「この大作が成功すれば きっと時代劇は救われるであろう。 その日を心待ちにしておるぞ。」
ひなた「えっ? あっ いや そやなくて…! はあ…。 そやからこそ 虚無蔵さんにも出てほしいのに…。」
別日
(テレビの音)
<オーディション直前に放送されていた『連続テレビ小説』は 『オードリー』でした。 京都・太秦が舞台で 時代劇に診せられた ヒロインのお話です。 自分と共通点の多いヒロインの物語を ひなたも熱心に見ていました>
榊原「おはよう。」
ひなた「おはようございます。」
榊原「今日 オーディションに先立って ハリウッドのアクション監督が 来はるそうや。」
ひなた「えっ そうなんですか?」
榊原「うん。 まっすぐ道場に入らはるらしいから 先 行って 開けといてくれる?」
ひなた「はい。」
道場
(足音)
ひなた「Hello….」