るい「違う。 私が… 決めたことなんや。 けど… やっと… あの時 閉ざした戸を 開けよういう気になった。 やっと…。」
勇「わしの方でも できるだけのこと すらあよお。 きぬの消息も調べとく。」
るい「ありがとうございます。」
勇「世話あねえ。 義姉さんも そりょお望んどるはずじゃ。」
るい「勇叔父さん。 久しぶりに会えて ホンマによかった。 明日 帰ります。」
勇「ええっ 何でなら。 もっと ゆっくりしていきゃあええがあ。」
るい「ひなたは仕事があるし お店も こないに長く閉めたん初めてなん。」
勇「それじゃったら 桃太郎だけでも残ってくれんかのう。 雉真の野球部 見せてやりたんじゃ。」
るい「叔父さんから言うてやって。」
ダイニング
錠一郎「それから 『サザエさん』のやつも 面白かったですね。」
雪衣「『マー姉ちゃん』じゃろ。」
錠一郎「ああ! そうそう そうそう。 あとは何やったかなあ… あの~ 甲子園が舞台の…。」
雪衣「『純ちゃんの応援歌』じゃ。」
錠一郎「ああ そうそう。 すごいな。 全部知ってはるんですね。」
雪衣「アハハッ。 私ゃあなあ 第1作の『娘と私』から 欠かさず見ゅうるんじゃ。」
錠一郎「第1作?」
雪衣「うん そうじゃ。」
錠一郎「それから 一本も欠かさず?」
雪衣「そうじゃ! アハハハッ。」
錠一郎「へえ~ すごいなあ。」
雪衣「好きなんじゃ。 1日15分だけの この時間が。 たった15分。 半年で あれだけ喜びも悲しみもあるんじゃから 何十年も生きとりゃあ いろいろあって当たりめえじゃが。」
ひなた「あれ? お父ちゃん まだ そないしてんの?」
錠一郎「うん。 いや お父ちゃんも もう一日いることにしたんや。」
ひなた「何で?」
錠一郎「いや まあ ちょっとな。」
ひなた「ふ~ん。」
雪衣「あっ いけん。 始まる!」
錠一郎「ああ ああ ホンマや。 危うく見逃すとこでしたね。」
雪衣「フフフフッ。」
♬~(テレビ)
客間
るい「桃太郎。 あんまりご迷惑かけんようにね。」
桃太郎「分かっている。 進路のこととか ここで ゆっくり考えるわ。」