連続テレビ小説「ちむどんどん」107話「豚とニガナは海を越えて」

(戸が開く音)

暢子「すいません まだ…。 しーちゃん 波子さんも…。」

重子「近くまで用事で来たから ついでに。」

波子「失礼します。」

暢子「すいません まだ 準備中で…。」

重子「いいの。 すぐ帰りますから。 あ~ また大きくなったわねぇ!」

和彦「母さん!?」

重子「それで どっち?」

暢子「えっ どっち?」

重子「決まってるじゃないの。 男の子? 私は 女の子じゃないかと にらんでるんだけど。」

和彦「そんなの まだ…。」

重子「女の子なら ピアノを習わせましょう。 習い事は…。 ピアノで決まりね。」

和彦「まだ 生まれてもないのに…。」

重子「波子さん。」

波子「はい。」

波子「こちらが スケトウダラと車麩を使った 煮しめ。」

波子「こっちが 菱の実ご飯。 どちらも栄養満点です。」

波子「私の田舎では 菊は 妊娠中や授乳時に欠かせないもので。」

波子「こっちのいごねりは 貧血予防。 プロの暢子さんに こんな田舎料理 差し出がましいと思ったんですが。」

重子「たまには 沖縄料理じゃないものもと思って。」

暢子「こんなにたくさん…。」

重子「あなたのためじゃない。 おなかの子が食べるの。 毎日3食 規則正しく食べてる?」

暢子「最近は あんまり…。」

重子「食べなきゃ駄目! 何があっても 食べるの。」

暢子「はい…。」

重子「おなかが すかなくても 頑張って食べる。 できるだけ 一緒に食べてあげなさい。 妻に ちゃんと食事をとらせるのも 夫の仕事。」

和彦「はい。」

重子「あなたみたいに 冒険をする女の子なんて 私が生きてきた世界では ありえなかった。」

暢子「冒険?」

重子「遠い南の島から たった一人でやって来て 自分で船を作って 広い海に こぎ出して そんな生き方ができるあなたが 羨ましい。 あなたの冒険旅行を 私たちも 一緒に楽しみたい。 あなたの船の 乗組員のつもりでいるの。」

重子「あなたの冒険旅行は もう 私たちみんなの冒険。 もちろん 晴れの日ばかりじゃない。 大きな波も来る 嵐の夜もある。 失敗しても 立ち止まってもいい。 とにかく どんな時でも 食べるの。 食べて 休んで 前より もっと強くなって すてきな船長に お母さんに なってね。」

暢子「ありがとうございます。」

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