平良家
暢子「んっ…。 ん~!」
三郎「沖縄のそばとは 全然違うだろ。」
暢子「デージマーサン!」
三郎「つまり 料理人になりたくて 東京に出てきたら 頼りのニーニーが 借金抱えて 行方不明。 友達にも 電話がつながらねえと。」
暢子「うん…。 んっ…。 間違い電話って言われて。」
三郎「ん~? あっ こりゃ無理だ。」
暢子「何で?」
三郎「市外局番 書いてねえな。」
暢子「しがいきょくばん?」
三郎「うん。 まあ 今夜は もう こんな時間だし 泊まっていきな。 風呂でも入って 温まって寝ろ。」
暢子「ありがとうございます。」
三郎「沖縄は 本島か?」
暢子「山原村です。 父の名前は 比嘉賢三。 母は 優子です。」
多江「やんばるの 比嘉賢三さん?」
暢子「はい! あ~ 8年前に 病気で死んでしまったんですけど。」
三郎「お父さん 若い頃 鶴見にいなかったか?」
暢子「本土で働いたことがあるとは 聞きましたよ。 父のこと 知ってるんですか?」
三郎「山原村なら 知り合いがいる。 今からでも 電話すりゃ お母さんに 知らせてくれるだろうよ。 ねっ。」
暢子「あっ はい!」
比嘉家
風呂場
良子「鶴見の県人会に 拾ってもらったから よかったけど。 しょうがないね。 だけど まさか お世話になった ボクシングジムの会長さんに 借金したまま逃げるって ある?」
歌子「うちは ちょっと安心したよ。」
良子「何で?」
歌子「ニーニーに 殴り合いは似合わない。 お母ちゃんも ボクシングをやめたら ケガする心配もないって 喜んでたさぁ。」
良子「お母ちゃんも歌子も お人よしすぎる。 叱らないといけない時に ちゃんと叱ってこなかったから ニーニーは いつまでたっても 甘えん坊だわけさ。」
歌子「ネーネー 何かあった?」
良子「うちは ただ 早く家族が お金の心配をしないで 暮らせるように なればいいなと思ってるだけ。」
居間
優子「はぁ~…。」
優子「ありがとうね。 良子も 毎日忙しいでしょ? 早く眠りなさいね。」
良子「うん…。」