オーディション会場
一方 やんばるでは 新人オーディションの予選が 行われていました。
「♬『私の私の彼は 左きき……』ありがとうございました。」
鈴木「はい 踊りも かわいくて よかったです。 ありがとうございました。 え~ じゃあ 次。」
鈴木「112番 比嘉… 歌子さん。 へえ~ 歌子さんっていいじゃない。 ねえ ほら いいっすよねえ いいっすよねえ。 ハハハ…。 歌が好きなのかな? ちょっと緊張してる? ああ… 大丈夫 大丈夫よ。 それじゃあ お願いします。」
♬~(ピアノ)
鈴木「はあ…。 はいはいはい いいです いいです いいです。 はあ…。 5分あげるから 外で緊張ほぐしてきなさい。」
歌子「あっ すっ… すっ すいません!」
鈴木「あっ 出口あっち。 そっち トイレだから。」
歌子「すいません。」
鈴木「それじゃあ 次 いってみよっか。 え~…。」
東洋新聞
学芸部
暢子「今 オーディションの会場なわけ?」
歌子「下宿の人に 番号を教えてもらって。 そこは どこね?」
暢子「えっ あっ ここは… 知り合いの…。 それで どうしたわけ?」
歌子「ネーネー うち 歌えない。」
暢子「何でかねぇ。 手のひらに『人』という字を…。」
歌子「30回書いて 飲み込んでみた。 だけど やっぱり無理。」
暢子「あっ そうだ。 歌子 うちの話を よ~く聞いて。」
歌子「何?」
暢子「歌も料理も 同じ。」
歌子「どういう意味?」
暢子「料理は 一番食べてもらいたい人を 思い浮かべて作る。 今 この料理を 誰に食べてもらいたいか。 それが 一番大事。 歌も 同じ。 一番聴いてもらいたい人を思い浮かべて その人のために歌う。 分かった?」
歌子「ネーネー すごい! その言葉 ネーネーが考えたの?」
暢子「あっ…。 うちも 東京で もまれて 大人になったわけさ。」
歌子「ありがとう。 うち 頑張ってみる。」
暢子「うん。 チバリヨー!」