連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第119話「妖怪いそがし」

台所

茂「来た早々 大工代わりに 使われましたか。 それは すまん事をしました。」

貴司「いや 木工は 昔から趣味ですけん。」

茂「うっかりした事 言うと 『家一軒 建てろ』と言われかねんですよ。」

貴司「それは 無理だ。 ハハハハ!」

布美枝「はい どうぞ。」

茂「編集の人 待たせとるけん 俺は これで…。」

貴司「どうぞ お構いなく。」

茂「そうだ 向こうに お茶 頼むわ。」

布美枝「はい。」

貴司「まだ仕事か。 忙しいんだな。」

布美枝「働いても 働いても 仕事が終わらんの。 妖怪にでも 取りつかれとるようだわ。」

夫婦の寝室

貴司「ちょっこし ベルトが伸びとるかな。」

布美枝「ベルト替えれば まだいけるね。」

貴司「買い替えてもらえると ミシン屋は ありがたいんだがね。」

布美枝「ごめん。 けど 大事に使ったら まだまだ 働いてくれるし。 このミシンには 愛着もあるしね。」

貴司「そしたら 町で ベルト買ってきて 付け替えるか。」

布美枝「お願いします。」

貴司「は~ 姉ちゃんは 大事に使ってるな~。」

布美枝「そげかな。」

貴司「お客さんから ミシンの調子が悪いって 呼ばれていく事があるだろ。」

布美枝「うん。」

貴司「油は 差しておらんし ほこりが詰まって 動かんようになっとる ミシン見ると かわいそうになるわ。 それでも 使ってくれとるうちは まだ ええけど 最近は 既製服が安いけん ミシン買う人も減ってきたわ。」

布美枝「あんたの商売も 大変だね。」

貴司「こげな事なら おやじの言う事 聞いて 酒屋やっとった方が よかったかな。 よし! これで ええ。」

布美枝「だんだん。」

貴司「そういえば 姉ちゃん さっき 妙な事 言っとったな?」

布美枝「え?」

貴司「妖怪に取りつかれたとかなんか。」

貴司「『妖怪 いそがし』?」

布美枝「うん。」

貴司「『江戸時代から伝わる妖怪で 取りつかれると 休む間もなく働く』。 なるほどなあ。」

布美枝「この間 うちの人の背中に 何か ついとるような気がして。 気になって しかたないけん この本 見たら これが…。」

貴司「プッ! ハハハハハハ!」

布美枝「何ね? 人が真剣に話しとるのに。」

貴司「姉ちゃん 村井さんに 相当 感化されとるなあ。 何でも 妖怪を持ち出すのは 村井さんの影響だわ。」

(2人の笑い声)

布美枝「そげだね。 去年から また テレビで 『鬼太郎』が始まったでしょう。 仕事の注文が増えてね。 うちの人 來る仕事は 断らんけん どんどん 忙しくなるばっかり。」

貴司「よう頑張るなあ 体 大丈夫か?」

布美枝「俺は 鉄のように丈夫だけん 平気だって言っとる。」

貴司「けど 晩飯くらいは 子供やちと一緒に ゆっくり食べたらええのに。 藍子やちも 寂しいだろう?」

布美枝「うん。 私も相談したい事が あるんだけど なかなか…。 忙しそうにしとるとこ見ると あれこれ 悩ませるのも 申し訳ないような気がして 何も言えなくなるわ。」

貴司「黙っとったら 姉ちゃんが悩んだり 困ったりしとっても 村井さんには 伝わらんぞ。 仕事 仕事で 家族と 距離ができてしまっても 男は なかなか 気づかんもんだけんな。」

貴司「今日の天気は どげだとか 飯がうまいとか まずいとか…。 そげな事しか 話さんようになって いつの間にか お互い 何 考えてるのか 分からんやに なっちょ~よ。」

布美枝「貴司…。」

貴司「ん?」

布美枝「あんた 何か あったの?」

貴司「うん…。」

布美枝「満智子さんと何か?」

貴司「どこのうちも そげん うまくは いっとらんわ。 あ 糸取りバネも替えとくかね。 これは ええミシンだ。 まだまだ 使えるぞ。 よし!」

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