連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第39話「消えた紙芝居」

回想

昭和二十六年 神戸

音松「『時は幕末 300年の 太平の夢をむさぼった 江戸の町…』。」

子供1「始まっとるで。」

子供2「剣士や!」

(音松の紙芝居の語り)

子供1「おっちゃん 飴おくれ。」

(音松の紙芝居の語り)

音松「『ぬ~っと 現れいでましたる 黒い人影。 『誰だい? てめ~は 誰なんだ? 一体!』 『うっふふふふ… うわっはははは…』』。」

音松「あんた 何ですか? さっきから ずっと見てるけど。」

茂「その… 紙芝居をやるには どげしたら ええもんかと…。」

音松「紙芝居屋になりたいのかね?」

茂「いえ 絵の方です。 自分は その… 絵の あの 紙芝居を描きたいんですが。 怪しいもんではありません。 すぐ そこで 『水木壮』という アパートやっとる 村井というもんです。」

音松「水木壮?」

茂「はい。 あの 絵を見てもらえませんか?」

音松「水木さん。」

茂「はい? …あの 自分は 村井です。」

音松「そう そう そう。 水木壮の 村井さんだ。 失礼しました。 いや~ しかし 描き方は 素人だけれども あなた… 話を作るのが なかなか 達者ですな。 水木さん。」

茂「そこは 自信あります… 村井です。」

音松「あっ そう そう そう。 水木さん… この試作版は 200円で頂く事にして…。」

茂「買ってもらえるんですか?」

音松「あ~た これから うちの専属画家 として やってみませんか?」

茂「やります! やらせて下さい!」

音松「よ~し 決まった! 当たるものを頼みますよ! 水木さん。」

茂<どういう訳か 俺を 『水木さん』と呼ぶんだ。 仕方がないから 俺の方が折れた。>

音松「頼みますよ 水木さん。」

茂「分かりました。」

回想終了

布美枝「ほんなら 『水木しげる』という ペンネームは その時に…?」

茂「ああ この人が 名付けの親という訳。」

音松「我ながら 不思議なんです。 『水木壮の村井さん』が 頭の中で 短縮されたんでしょうな…。」

(笑い声)

茂「雇われたのは ええが 毎日が締め切りで 忙しいといったら なかったですなあ!」

布美枝「毎日ですか?」

茂「ああ。 話考えて 絵描いて 色塗って… えらい重労働だぞ!」

音松「子供達は 話の続きを 待ってますからね。 毎日 新作を出し続けなくては ならんのです。」

茂「しかも 受けなかったら 苦情の嵐だ!」

音松「子供の小遣いで 成り立っている 商売ですから… 受けなければ 紙芝居屋は たちまち 食い詰めるんです。」

布美枝「恐ろしい!」

茂「うん スリル満点だぞ!」

音松「ハハハ…。」

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