善作「出来たんか?」
糸子「お父ちゃん。 でけた。 今から持っていく。」
善作「うん。」
糸子「で… ちょっとでも 気に入ってくれたら 見本 作らせてもらうとこまで 持ち込んでみる。」
善作「見せてみい。」
糸子「え?」
善作「お前が 描いたもん わしに見せてみい。」
糸子「え? けど 洋服やで。」
善作「わしが 見せてみいちゅうてんじゃ! 黙って見せんかい! お前 わしに洋服は分からん 思てるやろ。 ヘヘヘ。 それが 分かるんじゃ。 おんなじ糸のもんやさかいにな。 ふ~ん。 しかし 何や かったるい話やな。」
糸子「え?」
善作「さっさと 見本を作ったったら ええやないけ。」
糸子「は?」
善作「こんな ちょろちょろした絵 見せられるより 現物をやな これですっちゅうて ば~んと見せられた方が よっぽど おもろいで。」
糸子「うん。 ほんまやな。 ば~んとな。 ああ…。 そっちの方が おもろいわ。」
善作「せやろ?」
糸子「いや けど ちょっと待って。 作んにはな まず 生地代かかるしな 時間もかかって あかんかったら 丸損やで。」
善作「うん そらまあ そうやな。」
糸子「そら 賭けやな。」
善作「けど そっちの方が おもろいで。」
糸子「ふん…。 お父ちゃん。」
善作「ん?」
糸子「生地代ある?」
善作「ない!」
居間
<そんな時の奥の手が この箱です。 うちらが 神戸箱と呼んでいる この箱には 夢みたいな宝物が ようさん しもてあります。 全部 神戸のおばあちゃんから 送たれてくるプレゼントやら お祝いやらで どれもこれも ごっつい すてきなんやけど 使いみちがありません。>
<おばあちゃんは いまだに 何も分かってへんのか はたまた 全部 分かってやってんのか とにかく まあ 大概は 妹らの文房具に化けたり 運動靴に化けたりします>
糸子「やっぱし きれえなあ。」
<心斎橋の質屋を2軒 道具屋を2軒 回って>
質屋
糸子「いや もうちょい もうちょい! こんだけ!」
「いやいや そら かなわんわ!」
糸子「そやけど 見て このレース! 上もんやで!」
<生地屋は 10軒ぐらい回って その日 見た中で 3番目くらいに ええ生地を 買いました>
生地屋
糸子「すんません。」
店主「へえ。」
糸子「これ ください。」
<それが 精いっぱいでした>