糸子「そうや。 偉なったわ。 お父ちゃんが 毎晩毎晩 酒ばっかり食ろて 酔っ払ってる間に うちは 偉なったんや 悪かったな。 毎日 朝から晩まで働いて 洋服屋と生地屋 繁盛させた。 賃金 全部 家入れて 電気扇かて買うた。 今日かて クリスマスやさかい 妹らに ケーキ 買うて 帰っちゃあったんや。 悪いけどな お父ちゃんより 今は うちのが よっぽど この家 支えてるんや!」
善作「何やと!」
糸子「殴りたいんやったら 殴ったらええ! けど 商売は! 商売だけは うちが したいように さしてもらう!」
善作「このガキが!」
(悲鳴)
善作「こんなもんが なんぼのもんじゃ!」
(悲鳴)
善作「半人前が なめんなよ!」
(妹達の泣き声)
ハル「おっとな! ハハハ! 食べれる。 食べれるて! 大丈夫や。 大丈夫! ちょっと へちゃがっただけや。 味 変わってへん。 ほれ ほら 味 変わってへんて。 な! 箸 皿に入れて。 大丈夫 食べれる。 な!」
千代「ほれ! あんたが一番に お食べ! な!」
(泣き声)
ハル「なあ…。 よう… 買うてきてくれたな。 おおきにな 糸子!」
千代「おおきに! おおきにな。」
(泣き声)
千代「糸子! おおきにな!」
糸子「もう嫌や!」
(泣き声)
ハル「糸子!」
糸子「堪忍! しばらく お父ちゃんと 顔合わせたない。 神戸のおじいちゃんとこ いさしてもらう。」
松坂家
リビング
(小鳥の鳴き声)
勇「久しぶりやな。」
(戸の開く音)
勇「だけどさ レイコちゃん すっかり 美人になっちまって 誰だか分かんなかったよ。 えっ? 誰。 糸ちゃん 何しとん?」
糸子「はあ…。 おはようさん。 あ~!」
ダイニング
(遊ぶ声)
<久しぶりに来た 神戸のおじいちゃんの家では いつの間にか いろんな事が 移り変わってしもたようでした>
勇「糸ちゃん」
糸子「ん?」
勇「覚えてる? 坂崎君。」
糸子「分かれへん。」
坂崎「え~? 僕 覚えとうよ。 ほら 一緒に バウムクーヘン 食べたやん。」
糸子「ああ~!」
勇「思い出した?」
糸子「うん。」