醍醐「門限の5時までに 全部開封して 外で読んでから帰りましょう。 付け文には 将来の結婚と 女の幸せが 懸かってるんですもの!」
畠山「それ ミニーちゃんに? はなさんは 本当に 子どもが好きなのね。」
はな「泣いてるミニーちゃんを見ていたら うちの一番小さい妹の事を 思い出して。 毎日 私がおんぶして 学校に行ってたんです。」
畠山「妹さんをおんぶして学校へ?」
はな「ここには そういう生徒は いないけれど 私が行ってた尋常小学校では 女の子は 子守をしながら 授業を受けていました。」
醍醐「はなさん。 余計な事かもしれないけど 北澤様と お近づきになりたかったら あなたが給費生だという事は 黙っておいた方がよくってよ。 あの方のおうちは 金沢の由緒ある お家柄で お父様は 地元で一番の名士なんですって。]
醍醐「家柄もよくて 帝大生で 背も高くて…。 私 はなさんに好きな人ができて すごく うれしいの。 是非 あの方と うまくいってほしいのよ。 だから…。」
はな「醍醐さん。 ありがとう。 でも私… そんな嘘をついてまで 帝大生と お近づきになんて なりたくありません。」
<その時は 心から そう思う はなでしたが…。」
孤児院
♬~(讃美歌)
<次の日曜日 あの方と目が合うと やっぱり どうしても ドキドキ ときめいてしまうのでした。>
北澤「来週 孤児院の子どもたちのために クリスマス会を開き 何か面白い余興を やろうと思うんです。」
岩田「そこで 修和女学校の 麗しいお嬢様たちにも お手伝いをお願いしたいのです。」
醍醐「ええ。 喜んで お力になりますわ。」
はな「何をやるんですか?」
北澤「それが まだ 決まっていなくて。」
岩田「皆さんの得意なものを 教えて頂けませんか?」
松平「私は お琴を少々。」
畠山「私は 踊りを。」
はな「あの… 紙芝居は どうでしょう? 紙と絵の具があれば できますし 子どもたち きっと喜んでくれると思うんです。」
北澤「例えば どんな?」
はな「『親指姫』は?」
北澤「アンデルセンの『親指姫』ですか。」
はな「はい。」
北澤「いいですね。 あっ 皆さん いかがですか?」
「いいんじゃないでしょうか。」
「いいんじゃないでしょうか。」
北澤「花子さん。」
はな「はい。」
北澤「『親指姫』は いつ 読まれたんですか?」
はな「父が 一番最初に 買ってきてくれた絵本なんです。」