夜
史彦「じゃあ 戦後は横浜の鶴見に?」
賢三「ええ 親戚が闇市で 食堂やってたものですから。」
史彦「闇市ですか… 今となっては懐かしい思い出です。」
優子「先生の民俗学というのは どんな学問なんですか?」
史彦「昔の人の生活や しきたり 文化や芸能を調べたり 聞き集めて未来に伝えていく。 まあ そんなところです。」
優子「それで 今回は沖縄に?」
史彦「戦時中 陸軍の幹部候補生で 沖縄の部隊にいたんです。 でも 米軍が上陸する前に 配属替えになって。 あの時 もし ここに残っていたら 今の私は いなかってでしょう。」
賢三「自分は 中国をあっちこっち…。」
史彦「今でも時々 申し訳なく思うことがあります。 生き残ってしまったことを。」
賢三「自分も生きている限り 謝り続けないといけないと思っています。」
史彦「私は子供に そのまた子供にと 沖縄のことを語り継いでいく。 それが 生き残った私の使命です。 戦争で焼け落ちる前の首里城を 忘れられまえん。 本当に美しかった。」
優子「首里城は 何度も親に連れていかれて。 うち 実家 那覇なんです。」
史彦「じゃあ19年の空襲で?」
優子「はい…。」
史彦「すみません 立ち入ったことを。」
優子「いえ…。」
史彦「じゃあ 私はそろそろ すいません 遅くまで。」
賢三「こちらこそ お構いもできず。」
史彦「いえ ごちそうさまでした。」
優子「お休みなさい。」
史彦「では。」
(優子のすすり泣き)
暢子は 何か見てはいけないものを 見てしまったような気がしました。
(優子のすすり泣き)