紺野家
恵理「この前 話した 私の住んでる『一風館』なんですけど 真理亜さんっていう メルヘン作家が 住んでいるんですよ。 いつも スランプで『書けない 書けない』って ウンウン うなってて 一体 いつ 書いてるんですかね。 で いつも 容子さんと…。 ちょっと 足上げて下さい。」
恵理「容子さんというのは 旅行会社に勤めてる人で とっても 面白い人なんですよ。 真理亜ルームで よく いつも ゆんたくしてるんですけどね。『ゆんたく』っていうのは 沖縄で おしゃべりって いう意味なんですよ。 あれ…。 そうか…。 私達が いつも 押しかけてきているから 書く時間が 無くなって しまうんですかねえ…。 そうか…。 そうですよね きっと…。 はい 終わりましたよ。 ありがとうございました。。 じゃ ちょっと お湯 捨ててきましょうね…。」
恵理「それでですね。 遥さんっていう… これが ものすごい外科医ですが 突然『一風館』に やってきて『ここに住まわせて下さい』って こんな でっかい スーツケース 持ってきたんです。 でも『今 いっぱいです』って言ったら みんなに『出ていく予定は ありませんか?』とか言って 詰め寄って…『ないです』って言ったら『分かりました。 ここで キャンセル待ちします』とか言って。 …はい。」
真知子「ウッフ…。 ウッフフ…。 は~…。」
渉「ただいま。 …あ 失礼。」
恵理「あぁ ごめんなさい。 また 話が長くなって 遅くなってしまいましたね。」
真知子「急ぐの?」
恵理「あ… いえ。 紺野さんの お宅が 今日は 最後なので…。」
真知子「渉さん。」
渉「はい。」
真知子「おねがいがあるんですけど いいかしら?」
渉「…あぁ。」
真知子「私… アイスクリームが 食べたいんですけど…。」
渉「『ア… アイスクリーム』? 分かった。 行ってきます!」
真知子「私ね…。」
恵理「はい。」
真知子「初めて 主人に あんな わがまま 言ったの。」
恵理「え… そうなんですか?」
真知子「うん。 初めて。 ハハハ…。」
恵理「はぁ…。」
真知子「ちゃんとしてたから… 主人の前では ちゃんとね。 ごめんね。 変な夫婦だと 思ったでしょ? あの人 あなたが来ると 居なくなっちゃって…。 でもね そうして下さいって 私が頼んでたのよ。」
恵理「そうですか…。」
真知子「『一風館』だったかしら?」
恵理「え? …はい そうですよ。」
真知子「懐かしいなあ。 結婚した頃 住んでたアパートも そんな感じだったわ…。 みんあ お金が無かったから いろいろ 助け合ってねえ…。 楽しかったなあ。『一風館』か…。 行ってみたいなあ。」
恵理「えっ? …ぜひ いらして下さい! もう 大歓迎ですよ。」
真知子「そう?」
恵理「ええ。」
真知子「ハッハハハ…。」
(襖が開く)
真知子「あぁ…。」
渉「あ… これ。」
真知子「ありがとうございます。 食べましょう。」
恵理「ありがとうございます。」
真知子「はい。」
渉「あぁ…。」
恵理「いただきます。」
真知子「いただきま~す。」
真知子「う~ん おいしい。」
恵理「ええ…。」
真知子「ん…。」
恵理「はい?」
真知子「でも 私… 本当は バニラが好きなのよね。」
恵理「え?」
真知子「分かってないわよね。 フッフフフ…。」